静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

ゴスン 2023.10.12

10/12 演劇組織KIMYO『ゴスン』@ささしまスタジオ

 

 

 演劇組織KIMYOさんの公演『ゴスン』。トリプルキャストの本公演、私は名古屋虎之助さん(以下「トラスケさん」)がご出演の華麗な「す組」公演を観てきました!

 本当は「ご組」「ん組」「ん゛組」も観たかったのですが、残念ながら(ヒモにお金を差し出してしまったため)先立つものに余裕がなく、泣く泣く一回に絞りました。どうしてもKIMYOの世界に生きているトラスケさんを観ておきたくて……!

 

 前回『ピーポウ』を観劇した際も一人ひとり感想を挙げていったので、今回もその形で書いてみようと思います。

 『ピーポウ』の感想はこちら。

m328-0201.hatenablog.com

 まずは主演、西川寅吉役の元山未奈美さん。『ラクダ』『ピーポウ』に続き3度目の観劇です。出だしのトーンが枯れた雰囲気があって、元山さんの印象と違うかも? と思いながら観始めたら、幼少期の力強い生命力で衝撃を受けました。毎回違った活躍を見せてくださる元山さんの魅力はやはり素敵でした! トリプルキャストの公演でありながら、元山さんは全公演主演とのことで、凄まじいなと思いました。元山さんと確か磯谷さんのシーンで、先日読んだつかこうへい『定本 ヒモのはなし』に書かれていた女優の強さみたいなものがすっと腑に落ちたのが面白かったです。

 何度も脱獄を繰り返して、やっとの思いで熊沢のところへたどり着いて、ようやく身内の仇討ちだ、と思ったら、大悪党だったはずの熊沢に無理やり矛を収められてしまうところ、そのあっけない復讐の幕引きが無性にもの悲しくて大好きで、やるせなさを一緒に抱えられるところが愛おしかったです。ラストでは息子と和解していたのも好きでした。

 

 元山さんと同じく、全公演にご出演の与八役山本一樹さん。大事な役割なような、そうでないような、狭間の塩梅を見せるのがとてもお上手で面白かったです。皆揃いも揃って扉の開閉を「ガラガラガラ、ピシャッ」と仰っていたのがシュールで好きだなと思っていたところ、扉の開閉が肝になってきて、ただのコメディタッチシーンだと思っていたところがひっくり返されて驚きました。

 イカサマが発覚しぼろぼろになった与八が目の前で倒れて、思わず笑ってしまったのは内緒です。OPのダンスのねっとり感が面白くて笑ってしまったのも内緒です。

 

 猪俣三蔵役は浅井拡敬さん。浅井さんは多分初めましてのはず。浅井さんはとにかく筋肉がすごくて、何度か脱ぐ度に「わあ……」と声が漏れそうになりました。肩にチョモランマが乗っている。

 猪俣さん、仮出所が決まっている中できあがった鍵を使って開けてくれるところがとても好きでした。見付かったらきっと仮出所も取り消されてしまうだろうに……。

 あと浅井さんの釘役、めちゃめちゃに大好きです。最後の倒れるシーンは涙ぐみそうになりつつ笑いそうになりました。

 

 今回の目当てと言ってしまっても過言でないのが、熊沢欽介役名古屋虎之助さん。熊沢は悪役のポジションで、トラスケさんの悪役が大好きなおたくは大歓喜でした。熊沢は一連のシーンの中で扇を扇としても刀としても使っていて、たった一つの手持ちの小道具である扇がこんなにも雄弁に語るのが素敵だなと思いました。

 もちろん熊沢以外のシーンでは見慣れたトラスケさんが大爆発していて、肥溜めの汲み取りのおじいさんや遊女、そして板と、大好きな役がたくさん増えました。この日、遊女の時に懐かしのT-faLネタを観られてとても嬉しかったです。トラスケさんのネタの中でも特に好きです。

 なお、寅吉が脱獄する際に二人三脚で一緒に逃げるのが熊沢と同じ顔のトラスケさんなのがとても面白かったです。考えている割に相性が悪くて喧嘩しているところを捕らえられてしまうのも可愛いなとほっこりしました。

 

 定吉役の磯谷菜々さんも初見(のはずです)定吉さんの台詞はところどころ福澤諭吉の言葉のように聞こえて、とても聡明なのだろうなと思いました。そんな彼がどうして寅吉を居場所を告発してしまったのか、どうして一揆で命を落としてしまったのか、もっと考えていたかったなと思うキャラクターでした。

 磯谷さん、とても可愛らしいお方だったのですが、それが『ゴスン』の荒々しい空気の中によく溶け込んでいて面白かったです。女将のネタも大好きでした……!

 

 田口翔大さんのゆきは、ご登場から短髪であるにも関わらずとても嫋やかで、控えめな女性像がすっと伝わってきて良かったです。特に寅吉との別れのシーンにはとても胸を打たれました。田口さん、ゆきの印象が圧倒的に強くて他のお役の記憶がすこんと抜け落ちています……。

 

 松吉役の鈴木健斗さんは、一番面白かったのが生まれるシーン。松吉は寅吉への視線にどこか冷たさを感じて、それが「いつまで続けるんだ」という台詞に繋がっていたのかなと感じました。ラストシーンでの寅吉と良好な関係性が築けていたのも、「えたの子」というのも、一つひとつに重みがあって好きでした。

 お名前を失念してしまったのですが、同じく熊沢を敵としていた囚人の彼はその後どうなったのかな、とも思ったのですが、ここ、役が違えど親子で共通の男を敵としているのも大好きでした。

 

 最後に大脇ぱんださんの氏野徹。氏野は、はじめのうちの寅吉を絶対に脱獄させないという対抗心の強さが見えるところも、ラストの仮出所の時の優しさもとても好きで、寅吉とは相反する立場でありながらも、とても良い御仁なんだなと思いました。

 大脇さん、要所要所でインパクトを強いお芝居をなさっていたので、また別のところでも拝見したいなと思いました!

 

f:id:m328_0201:20231014003106j:image

 

 

 今回は直前まで予定を立てきれずぎりぎりになってしまったのですが、『ピーポウ』も『ゴスン』も楽しかったので、次回のKIMYさんの公演にも足を運びたいと思います!

 それにしても、「ご組」も「ん組」も「ん゛組」も観たかった~!