静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

妖界道中おったまげ之巻 2023.4.14-2023.4.16

4/14 『YAJIKITA3』夜公演@ナゴヤ

4/15 『YAJIKITA3』昼公演・夜公演@ナゴヤ

4/16 『YAJIKITA3』昼公演・夜公演@ナゴヤ

 

 

 4/1に『YAJIKITA』、4/2に『YAJIKITA2』の千穐楽を迎えたナゴヤ座。ナゴヤ座がお休みの間に挟んだ現場が濃いあまりにとても久しぶりのような気がしていますが、一週間挟んだだけなんですよね。不思議な感覚も抱えつつ、初週を観てきました!

 

 

◇ちょい見せ(第0幕)

~配役~14日/15日・16日

・弥次郎兵衛:名古屋山三郎さん(以下「座長」)

・喜多八:名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)

・講談師:名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエさん」)

・借金取り:名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)・名古屋虎之助さん(以下「トラスケさん」)/名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)・名古屋参永已さん(以下「サンエーさん」)

 

 なんと今作から開場前のちょい見せが復活! 『斉天大戦』以来なので実に3年ぶり。マウスシールドもなくなり、懐かしい光景が返ってきました。大まかな流れも、再演の頃のちょい見せと同じ。荷物パッチンや座長の三味線が見られて、あの頃わくわくした気持ちがそのまま蘇って嬉しくなりました。

 今後他の弥次さんが出てきた時にどんなちょい見せになるのかも楽しみです!

 

◇開演~「狐の尼寺」

~配役~14日/15日・16日

・弥次郎兵衛:座長

・喜多八:サンスケさん

・河童/七度狐/庵主:名古屋参笑太さん(以下「ショータさん」)/名古屋参太郎さん(以下「タロウさん」)
・骸骨/村人:トラスケさん/サンエーさん

・ストッキング村人:ダエさん・名古屋参九郎さん(以下「サンキューさん」)/ダエさん・名古屋参十郎さん(以下「ジューローさん」)

・おさよ後家:トラザさん

 

 三再演の『YAJIKITA』・『YAJIKITA2』はちょい見せがなかったため、冒頭で弥次喜多コンビについての紹介がありましたが、『YAJIKITA3』ではなくなっていて、ちょい見せが復活したから必要がなくなったのだな、とまた嬉しくなりました。

 また、新しい「ええじゃないか」ダンスは妖怪っぽさもあってとても可愛かったです。河童の造形がとても良くて、さすが加藤さんの得意分野だな~と思いました!

 「狐の尼寺」は、恥ずかしながら七度狐について詳しくなかったため事前にWikipediaを読んでいたのですが、おかげで解像度が高まっていたように感じました。「狼」もおさよ後家もそのままなのに、ナゴヤ座らしいテイストに仕上がっているのが面白かったです。

 おさよ後家を運んでくる村人たち、何故かストッキング相撲状態で笑ってしまいました。ダエさんは何故か似合っていて、普通の村のおじさんに見えたのが凄かったです。土日の4公演が同じ配役だったため初日が少し記憶が薄めになってしまっているのですが、サンキューさんよりジューローさんの方がお顔のめくれ具合が激しく、お顔が見える度に笑いが出てしまいました。

 おさよ後家は恐ろしさと面白さのバランスがとても良かったです! スモークの中から登場するおさよ後家、ウィッグの具合がベートーヴェン肖像画みたいな荒々しさで好きでした。「ええじゃないかを踊れ」と弥次喜多コンビを踊らせて合いの手を入れるおさよ後家はお茶目で、狐の化かし方の良さだなと思いました。

 庵主と七度狐は兼役。同じお話の中での兼役だからお仕度も大変だろうなと思いました。ショータさんの狐は可愛さ多め、タロウさんの狐は綺麗さ多めな体感なのですが、ショータさんはまだ一公演しか観られていないので、もっと観て感想を深めたいところです。タロウさんの狐メイクは間近で見られて、赤の細いラインの入れ方がとてもきれいでとても良かったです。お二方ともそうなのですが、狐の壁キックがとても格好良くて歓声が上がったのが素敵でした。花道に設置されたセットにぶら下がって弥次さんと空中戦を繰り広げるのも今まで見なかった演出で衝撃でした! あと私は村人さんが持ってきた縄に絡まる狐が好きです。このシーン、初日のショータさんの絡まり方がとても綺麗だったので、早くショータさんのご出演が観たいところです。

 村人さんは不思議なことに、トラスケさんだとお婆さん、サンエーさんだとお爺さんに見えたのが面白かったです。ここ、お二人のお芝居の違いなんだろうなあ。

 

◇「菊の井」

~配役~14日/15日・16日

・老人:ダエさん

・青山鉄山:サンキューさん/ジューローさん

・お菊:トラスケさん/サンエーさん

・オタク:トラザさん・ショータさん/トラザさん・タロウさん

 

 今回ソロビジュアルが出たときから楽しみにしていた、「菊の井」! ダエさんによる語りで静かに始まって、そこに鉄山が入ってくるのがとても良かったです。サンキューさんの淡々とした恐ろしさも、ジューローさんの感情的な恐ろしさも、どちらも良い鉄山でした。ジューローさんの鉄山が狂死するところで、下手に吸い込まれながらぎりぎりまで残る手の表情がとても良くて、やっぱりジューローさんの悪役って好きだなあと実感しました。ダエさんの怪談語りもとてもお上手で、もっといろいろな怪談を聞いてみたいと思いました。

 お菊さんは、初日のトラスケさんの「恥ずかしい……」で、お浪さんだ! と思って嬉しくなりました。サンエーさんのお菊さんの「恥ずかしい……」も可愛かったので、『BENTEN the KID』の再演があればサンエーさんの菊之助も観たいなと思いました。書いていて気が付いたんですが、もしかして「菊」繋がりでしたか……!? お菊さんの歌、松田聖子さんの「青い珊瑚礁」のオケだと思うのですが、あのオケに合わせて全然違うメロディを歌うお菊さんズの音楽センスが良いなと思いました。トラスケお菊さんももっと観たいです。

 お菊さんのオタクたちはインパクトはあるものの新規に優しいオタクの鑑でした! また、日本語MIXをこなすトラザさん・ショータさん・タロウさんのオタク組、凄いな~と思っていたのですが、ショータさんはアイヌ語MIXもできると聞いて衝撃でした。私は英語しかできません。トラザさんはどんどんオタクっぷりが重度になっていっていたので、来週以降どうなってしまうのか興味深いところです。

 最後は老人がお菊さんの許婚・三平さんだったことが判明したところ、お菊さんがさっと後ろを向いてしまうのが、幽霊になった姿を見せたくないという意思のように感じられてグッと来たし、井戸に三平さんが縋り付いたところでお菊さんがそっと振り向くのがとても美しかったのですが、まさかの結末で大笑いしてしまいました。

 

◇やまんば

~配役~14日/15日・16日

・山姥:サンキューさん/ジューローさん

・和尚:トラザさん

・タイキック:ショータさん/タロウさん

 

 このお話、もしかしてそうかな? とは思っていたのですが、やっぱり「さんまいのおふだ」でした! 福音館書店の「こどものとも」で出ていた『さんまいのおふだ』という絵本が、幼少期お気に入りだったので、これは……! あの……! と思ってちょっと泣きそうになりました。涙腺が弱すぎる……。

 山姥、サンキューさんの昔話的山姥も、ジューローさんのヤマンバギャルもどちらも好きでした。興味深かったのはジューローさんの山姥で、妖怪としての山姥よりギャルとして認識できたからこそ、昔話の山姥はもしかしたら「ただカニバリズムの傾向があった人間」だったのかな、と思いました。妖怪の成立の背景って考えると面白いんですよね……。

 山姥が包丁を研いでいるところを目撃してしまった喜多さんが物音を立ててしまい、動物の鳴き声で誤魔化すシーン、初日はスタンダードに猫だったのですが、二日目からネズミや象になって笑ってしまいました。絶対山姥の「なんだ象か」って反応はバグだと思います。

 絵本と大きく違うのは、三枚目のお札をタイキックに使うところ。タロウさんのお顔立ちがはっきりしているため、「現地の人!?」と山姥に言われていたのが面白かったです。

 あとこの話、休憩明け一言目に弁天小僧菊之助の口上が入るの本当にずるいな~! と思いました。『YAJIKITA』の「夢の宿」で変更になった『BENTEN the KID』の要素がここにきて復活して、『BENTEN the KID』から入ったおたくは悲鳴が出そうになりました。

 

◇山本五郎左衛門

~配役~14日/15日・16日

・和尚/山本五郎左衛門:トラザさん

・奪衣婆:ダエさん

・一本角の鬼/河童:ショータさん/タロウさん

・三つ目:サンキューさん/ジューローさん

・鳥頭:トラスケさん/サンエーさん

 

 弥次喜多コンビが逃げ込んだお寺の和尚様はなんと妖怪の総大将、山本五郎左衛門! 和尚様、山姥を豆にして食べてしまうのは絵本通りだったのですが、正体が山本さんなだけに妖怪として上手な感じがして好きでした。また、弥次喜多の息を止めさせて命を奪うべく正体を現すところで、一瞬で僧侶から魔王に早変わりするのがとっても格好良かったです! 和尚様のお姿の茶人帽に白メッシュの食えなさも素敵でしたが、煌びやかなお衣装も大天才でした。21日の金曜日はトラザさんがおられないので、どなたがこの役をやるんだろう……というところも楽しみです。

 地獄からの助っ人、奪衣婆も新たな力を手に入れていて頼もしかったです。『BENTEN the KID』の時のBGMを背負い、「問われて名乗るもおこがましいが」と口上を述べる奪衣婆が面白いし、それを苦々しげに見ている山本さんも面白くて、目が足りないシーンでした。

 山本さんが呼び寄せた妖怪たちに対抗する弥次喜多コンビと奪衣婆に手を貸した河童、OPの「ええじゃないか」にも参加していたので、もしかしたらずっと弥次喜多コンビの旅を見守っていたのかな? と思ってほっこりしました。『YAJIKITA2』の蜘蛛の糸芥川龍之介の作品から取られている要素だし、芥川の作品で一番好きなのも「河童」なので、おたくは河童が出てくる度にご機嫌になっています。河童、かわいい。

 初日、トラスケさんが階段の隙間に鳥頭をねじ込もうとしていて面白かったです。あの鳥頭、何という妖怪なのか、どこかで明かされたらいいな……。『YAJIKITA3』に出てくる3匹の中では一番好きです。かわいい。

 

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 初週は弥次喜多コンビがずっと座長・サンスケさんのお二人だったのですが、2週目は二人そろっておられない日もあり、サンジャクさんの初日もあり、まだまだ波乱の予感! まだ「YAJIKITA」の世界に浸れる喜びを噛みしめて、今月もたくさん観劇する所存です!