静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

ヒモのはなし 2023.10.17

10/17 『ヒモのはなし』@ささしまスタジオ

 

 

 ついに『ヒモのはなし』名古屋組が初日を迎えました! あまりにも楽しみでそわそわしてしまい、早めに到着したささしまスタジオ。お花の香りが鮮烈でした。

 あっという間に暮れていく夕暮れ時を緊張と共に過ごし、突然現れる安田桃太郎さん(以下:「桃さん」に怯えながら受付を済ませ入場! 中は全席ふかふかのお座布団があって、お気遣いに大感謝でした。

 

 前説では支配人役の永田さん(今回のブログでは敢えて「永田さん」とします)、学生役の織田さんが紙テープを巧みに売り、まこと役の河本さんがギターをかき鳴らして、いつの間にか現れていた名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)がうろ覚えでお歌を歌ってくださるという混沌とした光景が見られました。はじめ、永田さんがお話してらした時は「支配人」っぽさが強かったのですが、トラザさんが加わった瞬間見慣れた前説の形になってくすっとしました。前説の最後にツケではなくギターで大見得を切っていたのも不思議な感覚で面白かったです。

 

 ここからは戯曲を読み返しながら初日の記憶と感想をサルベージします。

 

 と、言いながら、冒頭から戯曲にはない演出。支配人が次々にキャストを紹介していくオープニング的シーン、大好きです。今回、シゲ役のトラザさん、明美役の廣瀬さん、支配人役の永田さんは存じ上げていたものの、まこと役河本さん、みどり役小椋さん、学生役織田さん、マリ役フランさんは初めて。ここでそれぞれのお名前を改めて把握できるの、助かりました! シゲさん、アバンでパチンコに行ってしまったという話があったからか、パチンコを打つ手をしてらして笑いました。

 

 冒頭のマリがストリップ劇場に来てしまうシーン。ここのフランさん、本当に瞳はきゅるきゅるだし、セーラー服がよく似合っているし、「17歳」という言葉に説得力がありました。戯曲では高校の卒業証書を持ってきているので、少し早まっているのかな? と思いました。

 このシーン、長年会っていないために距離感が掴めないでいるものの、突然危険な(危険だと思っている)ニューヨークへ行くと言い出した娘に行ってほしくないと思っているのが伝わってきて、シゲさんの優しさを感じました。でも家に帰っていないんですよね……。

 余談ですが、「女の子が数学やってどうするんだよ」「園芸とか裁縫とか」という台詞に昭和の考え方を感じて興味深かったです。私の母は文系ですが、女の子は大学に行かなくてもいいだろうという空気がある中で、親戚から最初に大学へ進学した女の子だったという話をふと思い出しました。

 マリはこの後明美が出てきて踊り始めるまで、泣きそうになるのを必死で堪えていて、制服のスカートのプリーツが握りしめられた拳で乱れるのが印象的でした。父親であるシゲさんを頼りたい気持ちと反抗したい気持ちが入り混じっているのが分かって、素敵なお芝居をされる方だなと思いました。

 カマ刈り、戯曲でも好きなシーンの一つなのですが、シゲさんがナチュラルにマリを背中に庇っていたり、「士農工商、ヒモ、カマ」と階級を説明してくださるところが無性に好きでした。あとここ、踏みガマができず逃げ出すのが支配人役永田さんで、なるほどな……と思っていました。

 明美がマリと邂逅して、シゲさんは逃げてしまったところ、はじめはお互いに硬さというか、打ち解けてはいけない感覚がありましたが、共通のミュージカルという話題を見付けて一気に距離が縮まるのが好きでした。ここの明美というか廣瀬さんがとても魅力的で可愛らしさと格好良さを持っていて大好きです。明美が密航しようとした話で、マリが「まっ!」と驚くところは戯曲にもありますが、その仕草を可愛いと褒めていたのが戯曲にはなかった部分で、その分とても記憶に残っています。この会話で二人の関係性がぐっと優しい空気になった気がして、大好きです。

 ダンスシーンの後の文通のところ、戯曲を読んでいた時はあまりピンときていなかったのですが、明美からの手紙の内容が少し変わって、トウシューズを送ったり、食事をしているか心配したりと、マリに対する親心(という表現が正しいのかわかりませんが)が芽生えていたのが暖かくていいなと思いました。

 マリが行く町がシカゴからニューヨークになっていたのは、ブロードウェイへのアクセスを取ったのかな?

 

 ところ変わって、八戸ミュージックホール。ここの支配人の長台詞、戯曲を読んだ時から永田さんの声で完全再生できていたので、「旅!」と聞いた途端、「始まった!」と思いました。ただこの長台詞、確か歌が加わっていた気がします。あと一曲目の曲振りも東北弁っぽくアレンジされていたのがツボでした。

 ここの明美のストリップ、とても艶やかで何度でも観たいと思いました。廣瀬さんの抜群のプロポーションや視線、以前16号室『ラクダ』を拝見した時からずっと憧れの女性の一人なので、この前のダンスシーンも含めて、マリが心を開いたのがわかるような気がしていました(気のせいです)。廣瀬さんの明美、とっても人の目を惹き付ける力があるなと思います。

 このストリップの照明、戯曲には「リズム感のある照明」と書かれていたことを完全に失念していたので、次回観る際は注目するように、心のメモ帳に書き留めておくことにします。

 学生役は、初めて拝見する織田さん。この学生、確か戯曲ではお名前が出てこないはずですが、明美には「織田ちゃん」と呼ばれ、シゲさんには「学生さん」と呼ばれていて、明美には名前を知られる親しさなのだなと感じました。学生は、見るからに堅物で奥手で、どうしてストリップ小屋で毎年アルバイトをしているのか? と思ってしまうような青年なのですが、だからこそ明美に惹かれて毎年毎年やってくるのだろうなあと納得しました。

 学生って、この『ヒモのはなし』に出てくる人の中で一番真っ当な人間なんだと思います。彼は鳥取から出て大学に進学して、四年で卒業して(これ偉いポイントです)、きっと司法試験にも合格して、社会人として勤めに出ます。多分、現代の感覚で一番親しみやすいのも彼です。だからなのか、学生と明美のシーンは一番等身大のように感じていました。明美もきっとそれを分かっているから、自分も傷付きながら、学生を傷付けようと過去の話をするのがとても辛かったです。でもきっと、過去の話をせずに学生と一緒に行くこともできなかったんだろうな……。

 明美が学生に惹かれていたのもきっと事実で、学生と一緒に八戸を出ていけば明美もきっとストリッパーをやめることができて、でもそれ以上に、明美の中にあるシゲさんという存在が大きくなりすぎてしまったのも事実なのかな、と思いました。帰ってくる度に待っていてくれるシゲさんの姿を想像したら、トラザさんのにこにこの笑顔がふっと脳裏に色鮮やかに浮かべられてしまって、私も明美かもしれない、と思ってしまいました。この感覚、『ラクダ』の時もあったな……。

 学生を追いかけようとしない明美に発破をかけるシゲさんの言葉が大好きです。明美がどうして三度目も帰ってきてしまったのか、私はまだ理解できていなくて、多分この公演が終わるまで考えることになると思うのですが、それでも「いつでも帰ってくりゃ俺が待ってると思うから駄目なんだよ」という言葉は、少しわかるような気がしました。

 学生と明美の会話が「結婚間近の恋人同士のケンカ」なら、この後のシゲさんと明美の会話のシーンは熟年夫婦の会話で、そのトーンの裏側にふと感じる温かさがいとおしくなります。シゲさんはマリを心配するあまり失言をしてしまって、ばつが悪そうにするところ、シゲさんは「まさか俺に惚れてるんじゃないだろうな」「そりゃなしだよ」と言いながらも、明美のことを大切には思っているんだろうなと伝わってきて好きでした。シゲさんの「オレらがこれやってきたからマリはここまでふんばれた」という台詞も、私はまだ理解できていないのですが、ここにマリへの申し訳なさのようなものが見えてお気に入りです。このシーンももっと観ていたいなと思います。

 

 この作品の緩急が心地いいなと思うのは、学生と明美からの一連のシーンが終わって、みどりたちの出番になるところ。このみどり、戯曲では「薄幸そうな」となっていますが、名古屋組の小椋さんがとても力強くて面白かったです。

 あと戯曲では「関東照明連合会の服部総家の二代目」ということになっていますが、この公演では「関東照明連合会の丸山総家の二代目」になっていて笑いました。今回名古屋公演の照明に先日株式会社BRATSに参入された丸山貢治さん(以下「丸さん」)が入っておられて、豪華だな~と思っていたのですが、まさかここでお名前が登場するとは思いませんでした。丸さんといえば今絶賛劇場版『山猫』のクラウドファンディング受付中。こちらもまだ悩み中です……。Tシャツとフォトブック、別々で5000円ずつのコースが出たり……しないですよねえ……(Tシャツは着ないだろうからいらないけどフォトブックはほしいおたく)

 このみどりが支配人に踊らせてほしいと頼むシーン、戯曲ではまことが口を挟む隙がなかったのですが、名古屋組のまことはハーモニカで口を挟んでくる(?)のが面白いなと思いました。ハーモニカだと台詞の邪魔をせず伝わってきますね。

 そこに入ってくるシゲさんと明美の寸劇、シゲさんの「明美さん!」が「アケミサン!」という片言さで、じわじわときました。題材が学生と明美なのもちょっとブラックで、かつそれをネタにしてしまおうという前向きさのようなものも感じられて良いなと思いました。確かここだったと思うのですが、明美が投げた手ぬぐいを、シゲさんが袖から転がり込んでキャッチしていて、客席がどよめいたのがちょっと面白かったです。

 シゲさんと明美が支配人と絡むシーンも、前半の馬鹿々々しさもある明るい空気から一転ずしんと重くなるのが印象的でした。

 ここ、戯曲で高崎の巽ミュージックの支配人は、支配人の女房の弟のパターンと支配人自身のパターンがあったと書かれていて、どちらにするのかなと楽しみにしていたシーンだったので、支配人自身の方でとても嬉しかったです!

 支配人は潔癖で細かいオカマなのですが、とても善人でもあって、それを永田さんがとても上手く表現してくださっていて素敵でした。支配人はシゲさんが明美を差し出すことにずっと反対してくれていたところも大好きです。

 

 支配人の持ってきた淫売の話に対して、戯曲ではシゲさんの「ようがす」という返答は淡々としているように感じていましたが、実際に観てみるとかなり絞り出したような「ようがす」で、シゲさんの感情がダイレクトに見えたのが好きでした。

 ここの場面のシゲさん、明美の行きたくないという気持ちは汲みたいのだと思います。でも、顔役と話していた際に、「まかしといて下さい」と支配人の制止を振り切ったのも、シゲさんのヒモ道としては正解だったのだとも思います。このシゲさんの相反する気持ちやどの方向にも虚勢を張ってしまう(という表現が正しいのかはおいておいて)ところにとても不思議な魅力を感じていて、戯曲を読んだ段階からずっと考えていました。その中でひとつ、「これかもしれない」と思った理由が太宰治です。坂口安吾が「不良少年とキリスト」で太宰治について「M・C、マイ・コメジアン」「フツカヨイ的にすべってしまう男」と評していますが、ひょっとするとシゲさんもM・Cなのかもしれない、と、このブログを書きながらひとつ答えを見つけた気がしました。

 

 明美が行ってしまった後のシゲさんの一人語りは、どんなトーンで来るのかと何度も読み返したシーンです。ここ、かなり静かな語りで、シゲさんがしゃがみ込んでぽつぽつと話し始めたのが、次第に熱を帯びてきて、トラザさんの大きな瞳がきゅっとまん丸に見開かれている求心力に抗えず、ただただじっと見ていました。

 戯曲では『風立ちぬ』や『智恵子抄』の名前が出てきていましたが、多分名古屋組の公演では名前が上がらなかったはず。堀辰雄風立ちぬ』は実はまだ読んでおらず(初版復刻本を積読にしています)、高村光太郎智恵子抄』しか分からないのですが、『智恵子抄』に描かれている愛は「まじめな愛」と評するにはいささか極まっているような気がします。でもきっと明美にとっては『智恵子抄』の愛が大事なんだろうな。自分がいなくなった後も、「元素明美」みたいなそんな愛……。これは未読の戯言ですが、明美の一回目の引退の、「こんなつばの広い真っ白な帽子かぶって」のくだりは堀辰雄っぽさを感じました堀辰雄は「あいびき」しか読んでいません)

 

 転換があって、みどりとまことの場面。まことは戯曲では線路に寝て電車を止めていましたが、名古屋組の公演ではハーモニカを吹いて電車を止めていてちょっと面白かったです。みどりとまことの思い描く「普通の生活」は、きっとうまくいかないんだろうな、と思わせるシゲさんとの掛け合いが巧妙でとても良かったです。

 戯曲ではまことの就職先の候補が山手線の外側だ、という話でしたが、名古屋公演では突然「豊田」「安城」「東岡崎」と続いたので、シゲさんもせめて名古屋市内に……というのかなと思っていたら、普通に丸の内だったので笑いました。遠すぎるよ。

 これまでまことって、ちょっと間の抜けた印象が強いキャラクターだったのですが、ここの場面でシゲさんに共産党だ、とピストルを撃つ真似をされても倒れないのがとても格好良くて好きです。ここで倒れたらきっと二人そろってまたこの小屋に戻ってきてしまうんだろうな、とか、でも結局この後この二人は別れてしまうんだよな、とか、まことは別れた後備前に帰って「バカ様」をやっているのかな、とか、いろいろな気持ちが駆け抜けました。

 

 憔悴しきった明美にシゲさんが優しく語り掛けるシーンも、実際どんな演出になるのだろうかと思っていたシーンのひとつでした。

 マリと仲を深めている明美は、やっぱりマリに産んでいたはずの娘を重ねているのだな、と思って妙に悲しさを覚えたのもこのシーン。明美が「三つになったら」「五つになったら」と重ねていくところ、明美がどんどん泣きそうになっていくのがとても辛かったです。また、そこにシゲさんが乗ってくれるのが優しくて、やはりシゲさんの根本には優しさが流れているのだと感じました。この後、明美(多分)劇中で初めて泣くのですよね。明美はここまでも泣きそうな顔をしている場面は多くあったのですが、声を上げて泣くのはここが最初だったように記憶しています。

 シゲさんの言う「ヒモ道」は分からないところがたくさんあって、きっとそれは私には理解しきれない「前むきのマゾヒズム」なのですが、そのマゾヒズムが必要な人もいて、きっと明美もその一人だったのだろうなとこの場面で思いました。

 

 その後のシゲさんと明美のブロードウェイでのシーンは、この『ヒモのはなし』の中でも一番好きなシーンだと言える自信があります。このシーン、シゲさんと明美であることに変わりはないのですが、シゲさん演じるジェシー・マーチンが百ドル札をばさっと降らせたところがとても格好良くて、実際は百ドル札ではなくただ新聞を切っただけの小道具が、本当に百ドル札に見えました。百ドル札が降り注ぐ光景、とても綺麗で目を奪われたので、またあの場所で観られたらいいなあ。

 明美の最後の独白は、ブロードウェイのミュージカルで主演を演じている少女とストリッパーの明美がごちゃまぜになっているような印象で、正直なところまだ理解しきっていません。でも、ここで必死に声を張る明美の姿にはとても胸を打たれました。

 

 ラストのシゲさんの独白、初めて読んだ時は分からなかったのですが、きっとこれは明美がもうストリッパーとして踊ることができなくなって、シゲさんがポン引きになった後のシーンなんですよね。ここでワッセワッセと押しながらも何故か泣いてしまうシゲさん、やっぱり生き方が少し下手な部類なんだと思います。それでも明美のことが好きで、結局愛しているんだなあと思えて、不思議と少しほっこりしました。

 ラスト、戯曲にはない台詞でシゲさんからの盛大な愛を浴びて、涙腺がうるうるしました。シゲさんと明美さんの「フィナーレ!」も大好きでした。

 

 カーテンコールでは紙テープ投げ! 普段オヒネリを投げているのだから余裕だろうと思っていたら、思いの外難しいうえ、後列から投げられた紙テープに身動きをかなり制限されました。千穐楽までにはうまく投げられるようになりたい!

 

 さて、戯曲にらめっこはこれでひとまず終了! あとは少し演出の話です。

 今回、劇中でさまざまな音楽が使われていて、もちろん知らない曲の方が多かったのですが、その中にRCサクセションの曲も複数入っていてとても嬉しく感じました! 私はほとんど有名な曲を知らないのですが、忌野清志郎の歌声が割と好きなので、大事なシーンで清志郎の声がかかるとすっと感情が入りました。忌野清志郎、私が物心つく前から毎年行っていたフジロックフェスティバルの公式テーマソングを歌っているので、あの声を聴くと夏の山の青さと生命力を思い浮かべるのですが、『ヒモのはなし』もどこか夏を彷彿とさせる青さがあって好きです。

 なお、これはもし演出の意図があったら申し訳ないのですが、何か所か劇中歌の音量に負けて最前列でも台詞が聞き取れないところがあったので、二日目以降聞こえるといいなあ……と思いました。

 

 最後に少しだけアフタートークのレポのようなもの。

 拍手が鳴りやまない中、「出づらい~!」と桃さんがご登場。ゲスト呼び込みで戻って来られたトラザさん、お衣装のロンTを脱がれて、BRATSさんのTシャツでご登場でした!

 桃さんが椅子を出そうと動いた途端、トラザさんがひしっと捕まえて「確実に帰ろうとしてた!」と主張。「お疲れの身体に」とパイプ椅子を見せて無罪を証明されていて面白かったです。

 約2時間座りっぱなしだった身体をトラザさんの合図で立ち上がって精一杯伸ばして再度着席。しかし桃さんは名古屋組の初日公演を受付などに入っていたためお声しか聞いておらず、トラザさんももちろん東名組の公演をまだご覧になっていないため、話すことがない……! 見切り発車アフタートークは、トラザさんの「アクションしましょうよ!」から始まりました。「アクションをしないゴンさんが観たかった」「アクションしないお芝居ができればあと30年はお芝居ができるかもしれない」「まあそこまで考えていないんですが」の畳みかけで笑ってしまいました。

 ところで2月の『新山猫 最終章』でも思ったことですが、素の(役が入っていない)状態の桃さんがお話されているところを観る機会が少ないため、素の桃さんのお声の高さに毎度新鮮に驚いてしまいます。不思議と癖になるお声だなと思っています。

 今回の『ヒモのはなし』は、つかこうへい作品をやりたかった桃さんが、せっかくやるなら自分だけでなく皆にもしんどい思いをしてほしいという気持ちでできたそうで、トラザさんの「なんでだよ」のツッコミが好きでした。

 初日前のお昼間にゲネプロをした際、東名組の皆様が客席でご覧になっていて、トラザさん曰く初日並みに緊張されたそう。ハードなお芝居なので、初日公演に合わせてゲネプロはセーブするはずが、客席を見て乗ってしまったとのこと。それを聞いた桃さんが、「明日仕返しするのはやめて」と仰っていて面白かったです。桃さん、この後朝まで飲んでお昼頃起き、ウォーミングアップをして19時の公演に備えるつもりだったのに、東名組の皆様にゲネプロはやりたいと言われた……と仰っていて笑いました。

 また、台本が難しい! という話で、桃さんが「読んだ瞬間に何も分からなくて閉じました」と仰っていて、分かる……と思いました。トラザさんも、演出がないと理解できなかったと仰っていて、「本が難しいのか俺の頭が悪いのか」「多分後者なんですけど」「!? それもそうなんですけど」という会話のテンポが良かったです。

 名古屋組の面々への印象を聞かれたトラザさん、フランさんや織田さんのことを「意外と(年齢が)いってる」と口走って背後を振り返った時に、足に絡んでいた紙テープががさっと音を立ててびっくりされていて面白かったです。

 今回織田さんのご出演は、桃さんがナゴヤ座のグループLINEに良い役者がいないかという相談を投げかけた際に座長が推薦したとのことで、織田さんのご活躍をもっと観に行ってみたいなと思いました! 学生役繋がりで東名組の山内涼平さんのお話も出てそわっとしました。山内さん、それこそ『蒼ノ風』以来拝見していないので、東名組で拝見できるのが楽しみです。

 また、河本さんは演出の久保田創さんが連れて来られたというくだりで、まことは感情をハーモニカでしか表現できないというお話があって「そうなの!?」と叫びそうになりました。これ、次回観劇の際はじっくり観察してみたいところです。また、稽古中、河本さんの時だけ久保田さんの台本への書き込みが増えるな……と思っていたら、「猿に育てられた少年」などのだ駄目出しでもなんでもない感想が書いてあったとのことで面白かったです。

 「ヒモ道」の話では、久保田さんに「シゲは誠実な人間なんだ!」と解説してもらったものの、「だったら働けよ!」という感想になってしまうトラザさんで、「信頼」のネオンがちかちかしました。桃さんもトラザさんも働いてしまうタイプだそうですが、「ヒモ道からは逃げ」という名言が生まれていて面白かったです。ヒモ像の話でトラザさんはとあるドラマを上げておられたので私も考えてみたのですが、一番近いのが織田作之助夫婦善哉』の柳吉でした。多分違いそうな気がします。

 

 次回のアフタートークの告知もばっちりして、今回のアフタートークは幕引き。

 

 今回の『ヒモのはなし』は2週間のロング公演でかなりハードだと存じますが、皆様が最後までヒモとストリッパーの世界を生き抜けるようお祈り申し上げます! 次回の観劇も楽しみ~~!!

 

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