静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

恋せず、戦え。 2023.2.16

2/10 演劇組織KIMYO『ピーポウ』稽古場見学会@ささしまスタジオ

2/16 演劇組織KIMYO『ピーポウ』@愛知県芸術劇場 小ホール

 

 

 『ハンザキ』ぶりのKIMYOさんの本公演! 『ハンザキ』当時は名古屋でお芝居を観るようになって半年少しで、存じ上げない方が多かったのですが、あれから3年。私のおたくレベルも上がり、たくさんお芝居を拝見したい方がご出演されている! と、喜び勇んで行ってきました! 『ピーポウ』はなんといってもご出演されている方が多く、ステージも広かったため、全体は把握できなかったのですが、私がみた『ピーポウ』を拙いながら書き残していきます。

 また、ひっそりこっそり稽古場見学会にもお邪魔したため、今回の記事はネタバレと、少し稽古場のお話も含みます。

 

 

 まずは女性陣、メリクール軍から。

 メリクール軍で特に楽しみにしていたのが、中友真矢さんの演じるジムニィさんでした。普段、生き別れのお姉様(忍者隠密隊 くノ一の魔矢様)は拝見していて、とても格好良くて可愛い方という印象なのですが、ジムニィさんはとにかく格好良くて美しい方! 稽古場見学会で拝見していた時から、これは格好良いぞ……! と思ってはいたのですが、実際にお衣装を召して板の上におられるのを観ると、更に格好良くて衝撃でした。アントワネッツ(エリート)のリーダーという立場があるからか、男がいない国で、他のアントワネッツの皆さんが男性に飢える中でも自分を律しているのがとても印象的でした。ジムニィさんは他のアントワネッツの皆さんと違い、パンツスタイルだったのも男性らしくあろう、強くあろうとしていたのかな? と感じました。ラストシーンで、皆が銃を下ろす中、なかなか銃を下ろさないのも辛かったのですが、パレットさんがエブリィさんに銃を向けると、守る対象であったパレットさんに銃口を向けるのが、ジムニィさんのエブリィさんへの愛情を感じて好きでした。

 櫻井カスミさんの演じるオッティさんは、ジムニィさんとは対照的に、とても華やかさのある方。本当は男性と会いたいし、恋愛もしたいのだと思います。それなのに男性は敵であるから倒さなければならなくて、だからナックを作ろうと考えたのかなと感じました。オッティさん、本当にお美しくて、稽古場見学会で拝見した時から絶対好みの女性だ! と思っていた通り、やっぱり好きでした。

 みきをさん演じるエブリィさんは、とっても辛かったです……。赤ちゃんプロジェクトに参加して宿したお腹の子が男であるために堕胎を命じられるのが、その直前の慈しみ深くお腹を撫でる様子があったためにより一層突き刺さりました。パレットさんの子は夫の手で亡くなりましたが、その悲しみを知るパレットさんによって子を失うエブリィさんの悲しみは計り知れません。隙をつこうとパレットさんの警備に加わったものの、エブリィさんも争いが何も解決しないことは気付いていたのではないかな、と思いました。

 木実あみさん演じるアルトさんは、コルデ村の出身の優秀な新人。同じ村の純新無垢なモコさんやミラさんより大人びているものの、他のアントワネッツの皆さんほど割り切れない様子が、子供と大人の境目に立っているように見えました。それでも素直さがあるために直球な質問を投げかけられるアルトさんだからこそ、ラストシーンでパレットさんに「いませんよ」と言えたのだと思います。コルデ村出身の方は、皆さんとても素直で純粋な方なのだろうなと思いました。アントワネッツにアルトさんが加わってくれて、本当に良かったです。あとガバッと頭を下げる度に綺麗なポニーテールが空を切るのがとても素敵でした。

 元山未奈美さん演じるパレットさんは、メリクール軍の皇帝。元山さんは16号室『ラクダ』ぶりに拝見したのですが、かなり印象が違って新鮮でした。パレットさんは男性から受けた仕打ちがきっかけで男性を敵と見なしましたが、根底は憎しみより夫に裏切られたことや子を失ったことへの悲しみが強いのかなと感じました。だからアルトさんに夫も子も、ここにはいないと言われて張り詰めていた糸が切れてしまったように思いました。

 柴田美月さん演じるミラさんはモコさんの親友のポジション。純粋で男性に否定的な気持ちもないモコさんとは違い、男性は敵という思想をしっかり植え付けられていて、きっとあの世界では教育に成功した女性の例なのだと思いました。それでもクーパーさんという男性と出会い、結婚式を挙げるまでに至ったのが面白かったです。

 伊藤摩美さん演じるリーザさんはレポーター。リーザさんはどちらかというと一般市民の立場ですが、レポーターという特性上プロパガンダに加担する立ち位置だと思うと、リーザさんにも見えないところで苦悩はあったのではないかなと感じました。

 矢方美紀さん演じるモコさんはこの『ピーポウ』のキーパーソン。初めのモコさんはきっと人を撃てなかったろうと思いますが、ビートルと行動を共にするうちに、人を撃つという選択肢を選べるようになったのが少しショックでした。またラストシーンでポッケと同じように歴史を学んでいたのが、始まりと終わりの形で好きでした。モコさんについては感情がたくさんありすぎてなかなか言葉にできないため、言語化できたらTwitterに放出しようと思います。

 

 続いてナックたち。

 山本一樹さん演じるポッケさんはモコさんのことが大好きで大切で、だから先走ってしまうのだなと思いました。ポッケさんが暴走しなければ彼自身は死なずに、モコさんとビートルさんと3人で暮らす未来もあったかもしれないけれど、そうじゃなければ戦争は終わらなかったかもしれないというのが、何ともやるせなかったです。

 鍵谷俊貴さん演じるダンクさんはメリクール軍の専属ナックで、他のナックがもふもふしているのに対し、アントワネッツの皆さんのようにパリッとしたお衣装。あまり話さないにも関わらずいちいち面白くてすごいなと思いました。

 宮谷達也さん演じるレオさんは謎が多くて、本当にずるいなと思いました。自由にいろんなところを行き来して情報を集める一方、パレットさんとも旧知のナックって一体何なんでしょうか……。レオさん、かなり好みです……。

 

 そしてナックと対になる存在がラビットたち。

 松井美里さん演じるシュシュさんと三曽田真里弥さん演じるコダチさんはラビットらしいラビットとして私娼窟のようなところにいる方々。おふたりはあのような生き方しか知らないままだったのかと思うと、近代文学にも描かれる私娼の女性たちに重なって見えて苦しかったです。お衣装が和装とコンカフェ嬢なのも、過去から現在に至る客商売の女性の歴史に感じて良かったです。

 白藤花音さん演じるイロハさんは、初めのうちはとても「ラビットらしい」怖い美女だという印象だったのですが、ガヤルドさんと共に過ごして可愛い一面を見せるようになったのが、「ラビットらしさ」を押し付けられなくなって外の世界を知ったからこそなのかな、と思いました。東側にガヤルドさんたちと隠れていた時にお耳を隠していらしたのが可愛かったです。

 もげさん演じるチリさんは、ポンコツ時代の小動物的な可愛さと、変わってからの格好良さのギャップがとても良いなと思いました。自由に生きるようになったことで、自死の道も選べるようになったのかなと思うと少し悲しい気もしました。きっとチリさんはハマーさんのことが結構大切だったのだと思います。

 

 男性陣も魅力がたっぷりでした。

 終夜さん演じるクーパーさんは、元々頼りない坊ちゃんという印象でした。それがミラさんやカワサキさんと出会ったことで、善も悪も知って成長した方なのではないかなと思います。

 加藤大輔さん演じるジャルパさんはお顔がなかなか認識できず気が付くのが遅くなってしまったのですが(申し訳ないです)、ハマーさんと一緒におられた方ですよね……? 彼のことももう少し注目して観たかったです。実験室に押し込められてもハマーさんが穴を掘っているのを希望として頑張ろうとする姿が良かった印象です。

 浦谷賢充さん演じるナイトロさんは、方針が違ったために裏切り者という立場になってしまったものの、彼は彼で戦争にうんざりしていたのだと感じました。裏切ったけれど、実験室に入れられたハマーさんやジャルパさんのことを彼なりに守ろうとしていてくれていたのが格好良かったです。あとナイトロさんのビジュアルがどうにも『仮面ライダーバイス』のジョージ・狩崎に見えてしまい、好みだな……と思っていました。

 福田勝明さん演じるガヤルドさんは、初めは酒と女性という欲求に忠実な男性という印象でした。しかし、イロハさんと共に生きるようになってから、ラビットが消耗品であるという考えもなくなり、人格者になったなと思いました。高台でナイトロさんと手を組むシーンのガヤルドさんがとっても格好良かったです! 余談ですが、福田さんは長髪のイメージが強くあり、お髭の印象もなかったため、当日短髪でお髭があるお姿を拝見したときに格好良くて「ひえっ」と言ってしまいそうでした。

 野田雄大さん演じるハマーさんは稽古場見学会で拝見した時からどんな方なのだろう? と不思議だった方でした。見学の際には、「性格がすっかり変わってしまった」ということだけが分かっていたのですが、まさか元があんなディーラーだったとは思いもよらず衝撃でした。チリさんのことをぽんこつと呼びながらも、実はずっと大切にしていたのではないでしょうか。チリさんが初期型のラビットということは、ハマーさんのところにいた期間も他のラビットの皆さんより長かったのだと思います。ハマーさんの最期は、泣くつもりはなかったのにボロボロと泣いてしまいました。

 藤原孝喜さん演じるビートルさんはとっても格好良くてずるい方でした。それでいて脚フェチな面白い一面も持っていて、どうあがいても好きになってしまう、と思いました。ビートルさんが最後にモコさんの銃弾を受け入れたのかどうか、真実は闇の中ですが、彼はコルデ村を爆弾で吹き飛ばした時から、その未来が訪れることを覚悟していたのではないかなと感じました。

 

 最後にアファーマティブスの皆さん。

 安江沙羅さん演じるキャリィさんと坂田旬さん演じるケイマンさんは面白い夫婦だなと思いました。バルバル湿原で夫婦として暮らしながらも、キャリィさんはメリクール軍にも加担しているのが、生きていくための悪なのかもしれないなと思いました。

 安元勇人さん演じるジュリアさんは、時々スイッチが入って自責するところがあって、彼の過去が見てみたいと思いました。カワサキさんに依存しているように見えたのが印象的でした。

 山本のぼるさん演じるカワサキさんは、初めから国家自衛軍にもメリクール軍にも所属しない立ち位置であるからこそ、両軍が和平を打ち立てた後重役になれたのではないかなと思いました。カワサキさんはその点で言えばこの世界で一番の勝者なのかもしれません。

 

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 長々と書き連ねてしまいましたが、『ピーポウ』はいろいろと考えることも多く、とても面白い作品だったなと感じました! KIMYOさんの作品をちゃんと観劇できたのが初めてだったのですが、今後も観に行きたいです。