静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

ヒモのはなし 2023.10.21-2023.10.22

10/21 『ヒモのはなし』昼公演@ささしまスタジオ

10/22 『ヒモのはなし』朝公演・夜公演@ささしまスタジオ

 

 

 火曜日に始まった『ヒモのはなし』も週末を迎えました。今回は土日の三公演の記録です。

 

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 まず土曜日! この日は朝公演・夜公演が東名組だったため、一公演のみの観劇でした。

 この日、出だしのシゲさんからナゴヤ座のトラザさんらしさを感じて、おや? と思いました。初日から、トラザさんでありながらトラザさんではないような雰囲気があったので、少し不思議な気持ちになりました。

 私の座った位置が良かったのか、ラストの一人語りを終えた後の「明美!」からの台詞で、今にも泣きだしそうに顔を歪めているシゲさんと笑って見守る明美の二人の表情を見て、感受性をどこかに忘れてきた私もすっかり泣きそうになってしまいました。「あっぱっぱーの?」「べーろべろ!」というやり取りも、そこまでの張り裂けそうな叫びから一段落ちて、絞り出していたのがとても好きでした。EDもまだ泣きそうなところをぐっと堪えて笑顔を作ってらっしゃったのを見てつい泣きそうになってしまいました。そういうの、弱いです。

 あとこの回は下手に入ったため、支配人に殴られる前のシゲさんの怒りの表情がよく見えて良かったです。

 

 日曜日はついに名古屋組が一日二公演!

 昼公演は、一番印象的だったのはマリでした。この日のマリは涙ながらに台詞を述べていることが多くてその涙についてずっと考えています。マリは、父親には反対されたらどうしようという気持ちがあるし、母親には申し訳なさからダンサーになりたいと言い出せないでいる少女だと思います。親に言い出せない不安や悲しみが、堪えきれずに溢れて涙になってしまったのかな。

 この日のシゲさんはずっと悲しさや淋しさを湛えていて、とてもダウナーなシゲさんだなと思いました。前日とギャップで風邪を引きそう。

 なお前説で永田さんが革靴でツケ打ちをし始めて大笑いしました。そんなことあるんだ……? あとこの回、観客がお手洗いに行かれている間場繋ぎでお話されたトラザさんが、22日連続で『ヒモのはなし』の夢を見ていると仰っていて、あまりのハードさに震えました。早く開放されますように……。

 

 夜公演は昼公演と大きく変わったわけではないのですが、きっと私が『ヒモのはなし』に慣れ始めたことでわかったことが増えたなと思った回でした。

 一番大きかったのが、まこととみどりが小屋を出るところからのシゲさんの表情。あそこですこんと抜け落ちたような表情をしておられたのがずっと気になっていたのですが、あれは決意なのだろうな、とふと思えたのがこの日でした。

 その後の明美とのシーンは、「もう戻れない」という気持ちなのか、後悔が滲んでいてしんどいなと思いました。この後悔に通じるのかも、と思ったのが、明美の幼さ、稚さ。明美もニューヨークに渡ったマリと同じ17歳の時にシゲさんに出会っているのですよね。夢破れた明美が、大人になる前にシゲさんと出会ってしまって、大人にならざるを得ず、果ては淫売をすることになる。シゲさんの「末はお前みたいなストリッパーになるつもりか」という台詞も、その後悔から来るのかな? と思いました。

 ずっと聞き取れずにいたマリから明美への聞こえない台詞、もしかして「明美さん、私オーディションに勝って帰りますから、待っててくださいね、……お母さん」「お母さん?」でしょうか。最後が「お母さん」なのかは怪しいのですが、マリが明美のことを「お母さん」と呼んでいたら私は嬉しいです。

 私は初日の感想でシゲさんは太宰治だ、という話をしたのですが、何故かこの日とても坂口安吾の評論のような空気を感じて興味深かったです。「志賀直哉に文学の問題はない」などの淡々とした語り口で隠された激情が、シゲさんにもある気がしました……!

 あと支配人に殴られている時のシゲさんが泣いていて、そのお声がとても辛くて「悲しい」を共有してもらった気になりました。

 

 これはまた謎のおたくがあほなことを言っているな……という話ですが、まこととみどりのシーン、「アカだって構やしないわよ。共産党だって殺される訳じゃないんだから」という台詞を聞く度に脳裏を小林多喜二が通り過ぎていって、良い時代だな……と思います。支配人の「東京オリンピックが~」の台詞で、そういえばこれは何年頃のお話なのかしら、と調べてみたら、1981年発表なんですね。なるほど……。

 

 

 一週目の六公演が終わり、残り八公演! 一観客としても、毎回変化していく作品なので、まだまだ観られる喜びを大切に一公演一公演観たいと思います!