静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

極上SAZEN 2023.9.14-2023.9.18

9/14 極上ナゴヤカブキ『SAZEN』公開ゲネプロ@ちくさ座

9/16 極上ナゴヤカブキ『SAZEN』昼公演・夜公演@ちくさ座

9/17 極上ナゴヤカブキ『SAZEN』昼公演・夜公演@ちくさ座

9/18 極上ナゴヤカブキ『SAZEN』昼公演・夜公演@ちくさ座

 

 

 『YAJIKITA3』千穐楽から1週間半。友人と遊んだり常滑に行ったりラジオに走ったり海鮮丼を食べたりしているとあっという間にちくさ座の公演を迎えてしまいました。早いものです。

 ゲネプロから始まった5日間(といいつつ金曜は普通に仕事でしたが)、始まってみると一瞬で終わったように思います。そんなこんなで、極上ナゴヤカブキ『SAZEN』の振り返り回です。

 

 以前ナゴヤ座で上演されていた『SAZEN』がかなり良い作品であったため、いったい極上版はどうなってしまうのだろうか、と多少不安のあった今回の極上版『SAZEN』。無理やり人を増やしたために生じてしまったあれこれはあったものの、かつてYoutubeで初めて『SAZEN』を観た時にいつか生で観たいと思ったシーンは健在で良かったです!

 

~配役~

丹下左膳名古屋山三郎さん(以下「座長」)

・諏訪栄三郎:名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

 

・相馬大膳亮:名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)

 

・蒲生泰軒:名古屋虎之助さん(以下「トラスケさん」)

・九十九三毛蔵:名古屋参笑太さん(以下「ショータさん」)

 

・小野塚鉄斎:名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエさん」)

・弥一郎:名古屋参永已さん(以下「サンエーさん」)

 

・天羽新次郎:名古屋参十郎さん(以下「ジューローさん」)

 

・瓦版屋: 名古屋参九郎さん(以下「サンキューさん」)

 

・赤雲丸:名古屋参太郎さん(以下「タロウさん」)

・青龍丸:名古屋参雀久さん(以下「サンジャクさん」)

 

 

丹下左膳

 座長の左膳、凄いという噂は聞いていたものの、実際に今回のちくさ座の尺で拝見すると運動量に圧倒されました。ずっと走り回っていて、本当に大変だったろうなと思います。

 左膳は赤雲丸の魔に魅入られることなく自分の意志で扱っているのがとても印象的で、単純に意志が強い人として見ていいのか、それとも他に理由があったのか、なかなかわかりませんでした。でも、七万五千石の花嫁御寮が地獄の花嫁御寮となったところで、もしかしたら左膳にとっては大膳様に裏切られるまではずっと魔剣を「いずれ殿に献上するもの」という意識で見ていたのかもしれないと思いました。左膳と大膳様の関係性、以前の『SAZEN』を観た時はもう少し深いように感じたので、今回は大膳様側に手駒が増えた分淡泊になっていたのかな……。

 ラストシーンでは左膳が弥一郎を道場に連れて戻っていて衝撃でした。左膳もたいがいにずたぼろになっていたと思うのですが、まだそんな体力があったならやっぱり化物だったのかもしれません。

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諏訪栄三郎

 私は「TRUMP」シリーズの影響で、身体を操られている人の剣が先に動いてしまう殺陣が大好きです。以前の『SAZEN』を観たときにも好きな動きだとは思ったものの、普段より広いちくさ座のステージで拝見できて、とてもテンションが上がったし毎公演にこにこで拝見しました。今回の栄三郎の立ち回りはどれも好きなのですが、序盤の対左膳の立ち回りではかっちりとした道場剣法の印象が強かった動きが、青竜丸に魅入られてからは重心が高めの舞うような動きに変わるのが大好きでたまりません。対弥一郎の背中から刀をはね上げる動きもとても好きでした。

 実は原作を読んでいると辻斬りを行っているのは左膳で、栄三郎は(多少ろくでもない要素はありつつも)善の立ち位置にあるので、ゲネを拝見した時は少し混乱しました。その分、真面目で実直な栄三郎が青竜丸によって狂っていく様子がとても辛く感じて、あのまま平和な小野塚道場が続けば、と思ってしまいました。

 今回の『SAZEN』はとても当てるアクションが多いように感じて、ひょっとすると冬の『新山猫』の際にトラザさんが当てるアクションをやられた経験値による進化だったのかな? と少し思いました。真偽のほどは定かではありません。覚えていたら11月くらいにお話しを伺いたいところです。

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相馬大膳亮

 サンスケさんの大膳様は映像で観た通り、最悪で傲慢な殿で、観ていてとても気持ちが良かったです。左膳や泰軒、三毛蔵といった部下を多数持ちながら、そのすべてをただの駒としか見ていない非道さが大好きです。大膳様の部下たちって、みんなどこか欠けた部分を持っていて、それを揶揄する殿は、見下すことで楽しみながらも優越感を保とうとする弱さもあるのかなと思いました。

 今回の極上版『SAZEN』で一番観たかったのは大膳様が倒れるところだったので、それが拝見できたことが嬉しいです。あの倒れっぷり、悪役の名に相応しい最期で大好きです。

 大膳様の歌う「DERA☆GROOVE」のシーン、毎公演楽しみだったし、楽日には紅愛さんも登場されてとても楽しかったです!

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蒲生泰軒

 もともとトラスケさん演じる泰軒のことがかなり好きだったのですが、原作を読んでいるうちにかなりハマってしまったのがこの泰軒という存在。もちろん原作とナゴヤ座版ではかなり違う雰囲気を持つのですが、滅法強いという点では共通でした。その泰軒が割とすんなりと倒されてしまった挙句、サイボーグになって復活したのは正直なところかなりショックでした。だってあの「死んだと思ったら生きていた」という要素が格好良さの一つだったはずなのです。それでも新しい泰軒を演じきったトラスケさんは凄かったなと思います! 生身の頃の泰軒の、栄三郎に向かって口の前で人差し指を立てるお姿がとても綺麗で好きでした。

 栄三郎VS泰軒といえばトラザさんとトラスケさんが撮影された動画もあって、この対戦カードは外せないものだったと思うのですが、今回じっくり観られてとても嬉しかったです! 泰軒の足技が好きでした。

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九十九三毛蔵

 三毛蔵はもっと活かす道はなかったのか? と考え続ける5日間になりました。今回の新キャラの中で、一番掘り下げがなかったキャラだと思います。情報があまりにもなくて、判断ができなかったキャラクターですが、そんな三毛蔵を声が枯れるまで頑張って演じておられたショータさんはお見事でした。

 三毛蔵の使い方によってはサイボーグ泰軒でなくても良かったはず……と考え始めると眠れなくなるので、この件は寝かせることとします……。

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小野塚鉄斎

 以前の『SAZEN』では姿を拝見できなかったキャラクターですが、今回はダエさんによって肉体を得ました。ダエさんがお鬚をはやしてらっしゃるのがとにかく新鮮で、かなり衝撃的でした。鉄斎としての出番はかなり短いはずなのですが、その中で強さと茶目っ気を見せつけるのはさすがダエさんだなと思いました。

 ところで鉄斎、小野塚道場は栄三郎に継がせようとしていましたが、ちゃんと弥一郎に話は通したのでしょうか……。江戸時代といえばやはり跡継ぎは長男で、たとえ栄三郎が婿入りしたとて弥一郎にしっかりと話を通さないといけないような気がします。

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弥一郎

 今回新たに登場したキャラクター。一体どうなるのかと思っていたら、まさかの語り部の立場でした。大膳様が実際にどのような最後を迎えたのかをしっているのは弥一郎だけなんですよね……。あと彼はお腹を何度も斬られていたように思うので、腹部の損傷がかなり心配です。

 弥一郎は栄三郎のことを兄弟子と呼んでいたので少し驚きました。ここの序列、どうなっていたのでしょうか……。個人的には栄三郎がと新次郎が少し上で、弥一郎は一番年下かもしれないなと思いました。弥一郎、年上で兄弟弟子の中でも一番腕が立って父からの信頼も厚かった栄三郎に対して対抗心が強いのが可愛かったです。わかりやすく勝てるのが身長だったところ、笑ってしまいました。

 今後は弥生と姉弟二人で道場を切り盛りしていくことになるので、かなりの戦力減で痛手だろうなと思いました。

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天羽新次郎

 新次郎に関しては行動理念が少しわかりにくいところがありました。左膳を悪と断定するのは本当に新次郎にとっての最善だったのかな……。あと、赤雲丸・青竜丸の二振りを「相馬藩所有のもの」としてしまうのも違和感がありました。新次郎だってそれが小野塚道場にあったものだと知っているはずなのに……。

 なお、弥一郎と刀を交えるところ、構えが鏡写しになっていたのが大好きでした。ふたりとも小野塚道場で学んだことが活きているからこその辛さがあります。

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瓦版屋

 ナゴヤ座版では講談師だったので、サンキューさんの役どころは割とわかりやすかったと思います。この瓦版屋、結局政府の公式発表しか伝えていないわけですが、報道の自由を掲げながらも幕府に負けてしまったのでしょうか……?

 あと、瓦版屋がスマホを持っていると瓦版を売る意味がなくなってしまうように感じるので、あの演出だけ違うものだったらなあ……と個人的には思いました。

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赤雲丸

 まずはタロウさん、ご襲名おめでとうございます! 今回の『SAZEN』でのご活躍と、それが襲名に繋がったこと、本当に嬉しいです。参太郎さんから襲名されたの、参之丞さん以来なので、タロウさんがここまでやってきてくださって本当に良かったなと思いました。ちょうど赤雲丸について感想を書いているタイミングで推しカラーがピンクだと判明し、きっとそうだろうと言っていたおたくはご機嫌です。

 赤雲丸は青竜丸と共に重要なポジションでしたが、青竜丸との対比が上手く効いていて面白かったです。赤雲丸はどちらかというと地属性というか、地面に足がついているし、声は低く体内に響く印象があって好きでした。

 タロウさん改め名古屋参史郎さんのご活躍、今後もたくさん拝見できるのが楽しみです。口上も早く聞きたい!

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青竜

 青竜丸はずっと地に足のついていない浮遊感があって、めちゃめちゃ好きでした! 栄三郎を操る動きや、弥一郎を吹き飛ばす動きの緩急がとても良くて、毎回見入ってしまいました。サンジャクさんは元々軽やかな印象がありますが、それとは違う人外の良さがあってまだまだ引き出しがたくさんあるなと思いました。

 栄三郎に人を斬らせるところ、途中から腰を折って語り掛ける様子がとても魅惑的で恐ろしくて好きでした。

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音楽

 今回、最後の見せ場に麗麗さんの「化物」が長尺で使用されていて、場面転換を何度も挟んでなお立ち回りや台詞が計算されているのがとても凄い技術だなと思いました。ここの稽古風景とかYoutubeに上がったら嬉しいな~!

 楽日は紅愛さんによる生歌唱もあって、ラッキーでした。昼公演、10/23のワンマンで初披露とのお知らせに対してトラザさんが「皆さん行きましょう、自分も行きます」と宣言してらしたのですが、私もトラザさんもきっとその日はささしまにいます。悔しい。

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 今回の極上『SAZEN』は、元の作品に無理やりキャラクターを増やしている状況なので、その分おざなりになってしまったところが多くあったなという印象があったのですが、まだまだ『SAZEN』は続くようなので、ゆるっと観に行こうと思います。といいつつも観に行けるのは11月になる気がしなくもないのですが、10月も残席があれば入りたいです!

 本当はもっと書きたいことがあったはずなのにうまく言葉にできないので、しばらくTwitterで吐き出すことになりそう!