静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

GANKUTSU-O 2024.2.17

2/17 『GANKUTSU-O -復讐の夜明け-』昼公演・夜公演@ナゴヤ

 

 

 極上『SAZEN2』から2週間。お仕事をやっつけてナゴヤカブキ14『GANKUTSU-O 復讐の夜明け』初日を観てきました!

 

 原作となるデュマの『モンテ・クリスト伯』は今までタイトルを知っている以外は『Fate/Grand Order』で巌窟王を使っている以外縁がなく、ストーリーをちゃんと知らなかったため、ジュニア版の『モンテ・クリスト伯』(金の星社(以下「小説」)を読みました。

 

~配役~

エドモン・ダンテス:名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)

ファリア司祭/ファラオン号船員:名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエさん」)

ヴィルフォール:名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

ダングラール:名古屋参十郎さん(以下「ジューローさん」)

ヴァンパ/モレル/ナポレオン:名古屋虎之助さん(以下「トラスケさん」)

ヤコポ/ファラオン号船員/ルイ十八世/部下:名古屋参永已さん(以下「サンエーさん」)

典獄/講談師:名古屋参史郎さん(以下「シロウさん」)

 

 普段は新作の前にそれぞれのキャラクタのビジュアルが発表されますが、今回はなんと初日にいらっしゃらない座長以外何も出ていない状況。誰がエドモンを演じるのか? というところから始まった初日でした。

 

 まず初の全員登場となったちょい見せ。ちょい見せの講談師は今回最も派手な衣装に身を包んだ典獄の担当でした。今までのちょい見せでは講談師は始めに語った後はほとんど話さないポジションでしたが、今回はほとんどが講談語りで台詞が少なめ。準備期間が少なかったため講談に任せる形にしたのかな? と思いつつも、新鮮な構成で面白く感じました。

 また、開幕直前のナゴヤザコバナシにて発表された登場人物の中にモレルがいなかったため、ナゴヤ座版では登場しないのか……と少ししょんぼりしていたのですが、トラスケさんがモレルとして登場し、大喜びしました。

 モレルのお衣装はグレーのスーツ。真っ赤なシャツが印象的なダングラールや、白黒のスーツ姿のヴィルフォールのどこか悪そうな雰囲気と対照的にどこまでも善人の雰囲気が漂っていたのが好きでした。

 ちょい見せの最後に登場し、意味深な言葉を残したヴィルフォールはあまりにも格好良くてとてもずるかったです。ヴィルフォールが巧みに唆すところ、小説でもエドモンの味方である振りをしていたことを思い出して好きだなと思いました。

 ジューローさん演じるダングラールは、爪を噛む癖があってとても良かったです! 爪を噛むという行為は不安やストレスの現れだと聞いたことがありますが、後輩であるエドモンに地位を脅かされることに対する恐怖がちょい見せから始まり本編まで度々表されていて好きでした。小心者が虚勢を張っているような、神経質なような、もう少し良い表現を見つけたような気がしたのですが、忘れてしまったので思い出したいところです。

 

 場内は『SAZEN0』の頃から大きく変わり、久々に花道が復活! また、舞台上のセットがすべて段ボールになっており、とても新鮮でした。途中で登場する武器などもうまく取り出されていて、そういう手があったのか、と衝撃でした。

 

 まず今回最も良い役どころだと思ったのは、シロウさんの典獄! 典獄の立場はずっと一貫していて、ただお金がもらえたら良いというのが面白かったです。それでいて、エドモンに対し「自分も亡霊のようなものかもしれない」と吐露する姿が興味深く、典獄という一人の人間の背景が気になりました。

 また、ナポレオンが脱走した際には、「俺様がいないからだ!」と豪語していて、さすが典獄だなと思いました。シロウさんの少しコミカルなお芝居も本当に良く、典獄という役との融合が素晴らしかったです。エドモンの食事を投げて寄越すのも良かった~!

 

 続いてヴァンパとヤコポ。

 トラスケさんがヴァンパとして登場した瞬間、まさか葉巻を吸うと思わず、光景の美しさにひっくり返るような心持ちでした。小説ではそのような描写を読んだ記憶はないのですが、地下通路に隠れ住んでいるのかもしれない、とも思いました。

 ワーテルローの戦いではカトラスでトラザさんと対峙しておられて、お二人の戦い方の差異が面白かったです。

 ヴァンパといえば、エドモンと繋がりがあるアウトローのイメージであったため、ダングラールからの依頼を受けエドモンを殺しに向かうのが新鮮でした。巌窟王と化したエドモンと再会する未来が来るのかな……?

 

 ナポレオンとしての登場はごく僅かだったものの、静かな威圧感と高潔さが見えて良かったです。

 

 ヤコポも物凄く良かった! ヤコポは、金で動くし金に貪欲だし、でもファリア司祭に追い返されると取り分を捨てても撤退しようとするし、とても人間らしくて面白いキャラクタだなと思いました。

 

 ルイ十八世は角度の都合でほとんど見えなかったのですが、正面側に入ることができたら注目してみたいところです。

 ヴィルフォールの部下も良い空気を出していて面白かったです。

 

 ダングラールについては既に少し触れたのですが、まだ触れていないところで面白かったのは、エドモンの告発状を書くシーン。ここ、わざと左手で書くという描写を小説で読んだ覚えがあったため、右手で書くのか! と驚きました。筆跡を変えることも思いつかないほど切羽詰まっているダングラールも良いなと思いました。なおその後ここのシーンは左手で書くようになったとのことで、それはそれでやっぱり好きだなと思いました。

 男爵にまで上り詰めたダングラールのお衣装は豹柄が入っていて、少し悪趣味なところがとても良かったです。どこまでいっても所詮金で買った爵位なのだということがお衣装からも分かる気がしました。

 また、ダングラールはワーテルローの戦いを経て男爵から伯爵に上り詰めていましたが、これはフェルナンがいないからなのでしょうか。メルセデスを取られたことへの復讐を誰が受けるのか、気になるところです。

 あとダングラール絡みの演出といえば、葛藤の中にいるダングラールを貫く一条の光。あの演出、ダングラールのよすがのように見えて面白かったです。

 

 ちょい見せで登場した瞬間からビジュアルでおたくを殴っていったのはヴィルフォール! ヴィルフォールは出世のためなら実父ですら差し出すという姿勢がとても好きです。どこまでも美しく凛として絶対悪であるナポレオンを裁くヴィルフォールですが、そのナポレオンの臨終に立ち会って動揺してしまうところに人間味を感じました。

 ところでナゴヤ座版のノワルティエは獄中で死亡しているのですね。小説のノワルティエのくだりが大好きだったので少し寂しいのですが、ノワルティエがいない世界での巌窟王による復讐のシナリオも気になるところです。

 ヴィルフォールのこと、もう少し言葉を尽くしたいところがいくつかあるのですが、追々触れます。たぶん。ワーテルローの戦いとか……。

 

 ファリア司祭はきっとダエさんだろう、と思っていた通り、茶目っ気もある良い司祭でした。ファリア司祭が受け継いだスパダ家の財産は、小説ではナポレオンの隠し財産ではなかったと思うのですが、ここがナポレオンと繋がることで、登場人物を一気にシャトー・ディフに集めてしまう脚本の手腕が巧みだなと思いました。

 また、修行の中で「東洋ではゴムパッチンで訓練する文化がある」「東洋の神秘だ」と仰っていて、その瞬間私の頭の中に怪盗クイーンとジョーカーがカットインしてきて大いにツボでしたはやみねかおる作品を読んでください)

 

 エドモンは今作ではまだ19歳の青年で始まるため、キービジュアルになっている座長ではなくサンスケさんが演じるからこそ「まだ何も成し遂げていない船乗り」が強調されていたように感じました。ダングラールやヴィルフォールに裏切られ、父のようなファリア司祭を失ったエドモンがモンテ・クリスト伯としてどう動いていくのか、早く観たい……! 7月の極上ナゴヤカブキが楽しみです。

 

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 今月は初日しか拝見できないのですが、次回拝見するまでに絶対新役が出るスケジュールだったので、3月が待ち遠しい……! まだ拝見できていない皆様のお芝居も早く観たいところです。

 とりあえず7月までは『GANKUTSU-O』モードなので、岩波文庫の『モンテ・クリスト伯』を読み始めても間に合いそう。海外文学は苦手ですがしっかり読んで解像度を高めたいです!