静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

スケロクブギ! 2024.9.20-2024.9.25

9/20 『スケロクブギ!』公開ゲネプロ@ナゴヤ

9/21 『スケロクブギ!』昼公演・夜公演@ナゴヤ

9/22 『スケロクブギ!』昼公演@ナゴヤ

9/23 「虎変披露祭2024」『GANKUTSU-O -乾杯の夜明け-』

9/25 『スケロクブギ!』夜公演@ナゴヤ

 

 

 

 

9/20・9/21

~配役~

助六(曽我五郎時致):名古屋山三郎さん(以下「座長」)

揚巻:名古屋虎之助さん(以下「トラスケさん」)

外郎売(曽我十郎祐成):名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

髭の意休(伊賀平内左衛門家長):名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエモンさん」)

工藤祐経/通行人:名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)

仁田忠常:名古屋参史郎さん(以下「シロウさん」)

かんぴら門兵衛/近江小藤太:名古屋参九郎さん(以下「サンキューさん」)

 遂に始まりました、新作ナゴヤカブキ『スケロクブギ!』! 劇場内に入ると、懐かしの花道と花道向こうの席が復活していて嬉しくなりました。

 

 まず何と言っても座長の助六助六といえばという出で立ちなのですが、なんと左右の耳にピアスが光っており、それが現代だからこそできる傾いた出で立ちで好きでした。座長のピアスの選び方に毎度注目してしまうピアスの観察が趣味なおたくなのですが、今回のピアスは華奢な印象のあるリングが四つと少し太いリングが一つ。それが、着飾って見せる助六の中にある曽我五郎のようで良かったです。

 

 ここのところナゴヤ座の作品の中では異色の洋物を見ていたからか、久しぶりに歌舞伎を下敷きにした作品で座長の歌舞伎らしいお芝居を拝見して、なんとなく「ナゴヤ座に帰ってきた」という感覚が強くあって好きでした。

 

 助六は一貫して兄と違い強くて粋な男として描かれているように思うのですが、それでいていざ親の仇討ができる場面になると刀を振り下ろせないのが助六の優しさだと思いました。

 

 

 「助六をやる」と発表された時から、きっと揚巻はトラスケさんだろうと思っていたので、ゲネプロ・初日とトラスケさんの揚巻が観られて嬉しかったです!

 揚巻はとても美しい太夫ですが、美しさだけでなくて強さがあって好きでした。曽我兄弟は仇討ちのために苦しい時を過ごしてきたものの、実際に仇を目の前にして首を落とせず躊躇ってしまう弱く優しい心を持っていますが、揚巻はその弱さに気付いた上で謝罪で済ませるという強さを持った女性なのだろうなと思いました。揚巻の言葉で皆が命の奪い合いをやめるのがとても良かった……!

 

 トラスケさんの舞が観られたのもとても嬉しかったです! 工藤に友切丸を握らされて逡巡する姿も、討つなら今だと動く姿も美しくて好きでした。

 

 揚巻の悪口の口上のテンポや動きが原因で『TRUMP』のアンジェリコによるアンジェリコフィーバーに見えていたのは内緒です。

 

 

 今作一番驚いたのは、まず冒頭でトラザさん演じる外郎売が長々と「外郎売」の口上を述べるところ! 「外郎売」の長い長い口上を一人舞台の上で浪々と述べているトラザさんを観られてとても幸せでした。外郎売の口上が終わると共にOPに入るのもとても格好良かったです!

 余談ですが外郎売の袴がとても忍術学園一年生の色なことに加えお名前が「しんべえ」なので、私の頭の中ではずっと「しんベヱ」という表記になっています。

 

 この役どころ、好きなところがたくさんあるのですが、冒頭の次に好きなのが外郎売のなりをやめ曽我十郎祐成の顔になるところです。頭巾を取った瞬間、それまでの可愛い雰囲気から急に精悍な顔つきになるのが本当に好きで、ゲネプロで拝見した際には驚きのあまりひっくり返るところでした。練り歩きの外郎売が頬に色があるのに比べ、このシーンは頬紅を落としているような気がするのですが気のせいですか……?

 

 曽我十郎という男は本当に不器用で嘘のつけない正直な人だと思います。二幕の冒頭で工藤の元で控えていてもずっと顔に本心が出ていて、それがとても愛おしく感じました。トラザさんの曽我十郎、本当に大好きです。

 

 曽我十郎ってとてもまっすぐで青いところがあるなと思っていたのですが、「おねしょの恩」が十八年ということは、まだ二十代前半なんですか……? と思い至って衝撃を受けています。

 

 

 ダエモンさん演じる髭の意休も面白い役どころでした。意休は鎌倉殿の首を狙う平家の残党でありながら、どちらかというと源氏の縁者に惹かれているのですよね……。義経静御前の縁者だったら鎌倉殿は敵の扱いなのかしら。

 意休は最後の最後まで「あくまで揚巻のため」という姿勢を崩さないところが大好きです。揚巻のために友切丸を曽我兄弟に渡し、揚巻が言うから仇の命を取るのではなく「謝らせる」という選択を取る意休、一幕では助六に散々男ぶりを揶揄されていますが、良い御仁だなと思いました。

 

 競馬のシーンで一人だけ意休がユニコーンに乗って登場するのがツボなのですが、それよりも一人だけあまり走ってなくて元気な意休が台詞をゆっくり言って他の人たちに「巻いて!」と言われていたのが本当に面白くて大笑いしました。

 

 

 工藤はサンスケさんが演じていることもあって、「性根の良い相馬大膳亮」という感想です。上に立つ者であるため(曽我十郎を嘲るなど)それなりの性格の悪さはあるのですが、揚巻の言葉を受け納得した上で自分の意志で謝罪をしたり、自分が使える頼朝公の命を狙っていた意休にも機密情報を流し謝らせに来ることができるようにしたり、絶対的な悪でないところが面白くて好きでした。

 

 仁田はシロウさん! 工藤の右腕として働く仁田、とても格好良かった……! 工藤が静御前の舞を知っているのはその場で鼓を打っていたからだとして、仁田もそれを知っていたのはやはり仁田もその場にいたからなのでしょうか。仁田のメイクも割と老け顔だったから、工藤の家臣としてもベテランなのかも……。

 

 

 本当はかんぴら門兵衛や工藤について感想を言いたいのに、まず出てくるのがブロッコリー侍になってしまったサンキューさん。ブロッコリー侍って何ですか!? ブロッコリー侍に果敢に挑もうとする曽我十郎、喧嘩も下手だし運もないしで本当に何をやってもうまくいかないのだな……と思いました。

 ゲネプロの時は謎のトナカイだったのですが、やっぱりブロッコリー侍の方が好きです。

 

 門兵衛は破落戸という印象が強いのですが、その中でもサンキューさんらしい茶目っ気のある部分が見られて良かったです。『MACBETH』の後夜祭でも麗麗さんの「キットカット(略)」が言えなかったサンキューさんですが、だんだん言えるようになっていて面白かったです。

 

 近江は台詞こそないものの、武闘派ぽさがあって良かったです。淡々とかつ的確に仕事をこなす近江、とても格好良く見えました。

 

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9/22

~配役~

助六(曽我五郎時致):名古屋山三郎さん(以下「座長」)

揚巻:名古屋参永已さん(以下「サンエーさん」)

外郎売(曽我十郎祐成):名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

髭の意休(伊賀平内左衛門家長):名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエモンさん」)

工藤祐経/通行人:名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)

仁田忠常:名古屋参史郎さん(以下「シロウさん」)

かんぴら門兵衛/近江小藤太:名古屋参九郎さん(以下「サンキューさん」)

 さて、前日幕が上がったばかりのこの『スケロクブギ!』ですが、初日におられたトラスケさんがこの日早速お休み。入れ替わりで初日を迎えたサンエーさんが揚巻となりました。

 揚巻の結い上げた髪型は、トラスケさんの揚巻とはまったく違うスタイル。そんな揚巻が煙草を一飲みしてから助六に渡すのがとても色っぽく素敵でした。

 

 回を重ねる毎に馬乗りのシーンが終わったあとの福利厚生が手厚くなっており、水分補給ができるようになっているのですが、上手の階段で曽我兄弟が水を回し飲みしていて、仲の良い兄弟だな……と思います。可愛い。

 

 確かこの日かんぺら門兵衛が麗麗さんの「キットカット(略)」をほぼ言えて、客席が沸いた覚えがあります。

 

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9/23

~配役~

エドモン・ダンテス:名古屋参史郎さん(以下「シロウさん」)

ダングラール:名古屋参十郎さん(以下「ジューローさん」)

ヴァンパ:名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

モレル/ダエニル:名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエモンさん」)

ナポレオン・ミズノ・ボナパルト:金虎酒造 水野さん

 新作『スケロクブギ!』が初週を終えたナゴヤ座は止まることなく、毎年の恒例イベント、虎変披露祭に出演がありました!

 今回の演目は、一か月前に公演を終えたばかりの『GANKUTSU-O -復讐の夜明け-』……かと思いきや、ダエモンさんによる改作の『GANKUTSU-O -乾杯の夜明け-』でした!

 

 エルバ島に訪れたエドモン、ダングラールの前にナポレオンの財産を狙うヴァンパが現れ、更にそこにナポレオンの執事を自称する謎の男・ダエニルが現れて利き酒をするという少しはちゃめちゃなストーリーなのですが、お酒を飲んで上機嫌のおたくにはこれくらいの方が楽しかったです。

 あと12時の回では盛大に外したエドモン、ダングラール、ヴァンパの三人でしたが、15時の回ではしっかりヴァンパが当てていて嬉しかったです!

 

 ヴァンパが「世界を股に掛ける海賊」と言った時に頭の中には『海賊戦隊ゴーカイジャー』が浮かんでいたのですが私だけですか……?

 

 間に行われた日本酒講座も今年も面白かったのですが、それより虎のぬいぐるみのティッシュケースを回している一座が可愛くてそっちに注目してしまいました。個人的には背中の穴から手を出す猟奇シーンを見せるトラザさん、虎を受け取った瞬間強襲されるジューローさん、膝に載せた虎の口元にマイクを当てるシロウさんがツボでした。

 日本酒はそのままで飲みがちなのですが、サムライロックという名前に思い入れがあるおたくなので飲んでみたいです!

 

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9/25

~配役~

助六(曽我五郎時致):名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

揚巻:名古屋参永已さん(以下「サンエーさん」)

外郎売(曽我十郎祐成):名古屋参九郎さん(以下「サンキューさん」)

髭の意休(伊賀平内左衛門家長):名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエモンさん」)

工藤祐経/通行人:名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)

仁田忠常:名古屋参十郎さん(以下「ジューローさん」)

かんぴら門兵衛/近江小藤太:名古屋参雀久さん(以下「サンジャクさん」)

 『スケロクブギ!』の初日から虎変披露祭まで堪能したおたくは、流石に唐突に追加されたILL TOKAI UNDERGROUNDまで大人しくしている予定だったのですが、座長がお休みのこの日、どうもトラザさんが助六の予感がしてならず、友人からの速報を聞き居ても立ってもいられなくなったため走っていってきました。

 

 『MACBETH』で主演を務めた直後に初挑戦の外郎売が待っていることを想像するだけでも大変なのですが、更にその直後に助六も待っていたこのハードスケジュール、まず新役の初日を迎えたトラザさんが本当に凄い……! 『GANKUTSU-O』では結局トラザさんの主演を拝見することがなかったので、ここで拝見できて本当に嬉しかったです。

 

 曽我十郎もそうでしたが、助六もやはりどこまでも真っ直ぐな方でした。兄と違うのは、助六自身が「格好良くあるにはどうしたらいいか」を考えて格好良く見せているという印象があったところ。それがとても鯔背で眩しくて、敵わないという十郎の気持ちが分かるような気がしました。

 実現しないことではありますが、トラザさんの演じる曽我兄弟はきっと鏡合わせのようにそっくりで、優しい兄弟なのだろうなと思います。

 

 ラストで工藤を討とうとする助六の慟哭は『MACBETH』で魔苦減須を経たからこその感情の出力量に感じて本当に好きでした。お忙しい中でしたが、このタイミングで助六を演じた理由はこれかもしれない、と邪推しました。

 

 

 揚巻は日曜に引き続きサンエーさん。

 馬のシーンが終わったあと、曽我兄弟が水を回し飲みしているのを見てボトルを投げてもらったり投げ返したりとアグレッシブな面があって好きでした。また、水を曽我兄弟からもらう前に工藤に水を分け与えられそうになっている揚巻に対して助六が慌てて止めていたのも良かったです。

 

 

 トラザさんが助六ということは必然的に曽我十郎も新役。どなたがやるのかと思っていたのですが、なんとサンキューさん! サンキューさんは元々困り顔がよく似合う印象があるのですが、十郎はその困り顔が良く映えていて良かったです。

 

 そしてなんと言っても良かったのが、外郎売の口上! トラザさんが述べていた外郎売の口上がおそらくナゴヤ座版に少々アレンジされたものだったのに比べ、サンキューさんはおそらく原文まま。これを講談スタイルでやってみせるのがとても良かったです! 体感ですが、トラザさんの外郎売は道を歩く人々の気を引くための口上で、サンキューさんの外郎売は店に訪れた人に買わせるための口上という気がしたのも面白かったです。

 

 

 仁田はこの日初日のジューローさん。この日から仁田と近江の着物が交換になったらしく、黒っぽいお着物がジューローさんによく合っていました。

 ジューローさんの仁田は少しコミカルで、「殿は何でもご存知だ」という度に手で工藤を示しているのが面白かったです。

 

 

 同じく初日のサンジャクさんは門兵衛! サンジャクさんの門兵衛は手下感が強くて、町で顔の効く意休につけば安心だという狡猾さがあって好きでした。縹色っぽいお着物も似合ってた……!

 近江はやはり何も話さないし終始真顔ですが、、仁田と一緒に手で工藤を指し示していて、ノリが良いタイプなんだ……と衝撃でした。

 

 そして十郎の喧嘩相手の酔っ払い。酔っ払いの真似が上手すぎて大笑いしました。あれもっと見たすぎる……! またトラザさんの十郎の時にも見られたら嬉しいです。

 サンジャクさんは『GANKUTSU-O -復讐の夜明け-』で結局5日程度しか観られなかったので、『スケロクブギ!』はもっと観られたらいいなあ……。平日か……。

 

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 どんどん抜け落ちていく感想を書き留めるのに時間がかかっている間にもう次の観劇予定が迫ってきていて怯えるのですが、今週はいろいろと観る予定があるので、とても楽しみにしております!