静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

壬生浪士無頼伝 2024.8.3

8/3 SCANP 14 深山義夫 追悼公演『壬生浪士無頼伝』夜公演@ちくさ座

 

 

 

 

~配役~

芹沢鴨:憲俊さん

新見錦:平野泰新さん

平山五郎:野田雄大さん

平間重助:宮田せいじさん

三味線:山口晃司さん

 

近藤勇:永田薫さん

土方歳三:Jさん

沖田総司:加川未友さん

山南敬助:荒川裕介さん

永倉新八:フランさん

原田左之助:日向竜翔さん

松平容保:呂智廣さん

斎藤一:渡部将之さん

 

梅:小椋奈々さん

糸里:白藤花音さん

千代:人見桃歌さん

 

まさ:深やまとば子さん

 

殺陣衆:松島果穂さん、あいちしおりさん、碧木葵さん、幸成茂さん、伊川大介さん、LEOさん、鈴木悠馬さん、美響さん、水野光さん、吉田駿助さん、村井雅和さん、手嶋政夫さん

 

日替わりゲスト(岡田以蔵):ごとーあきらさん

 

 実は野田さんの緩すぎるファンなのでチャンスがあれば観に行きたいと思っていたこの作品。ちょうどこの回がごとーさんのゲスト回で、友人も来るとのことだったのでタイミングを合わせて行ってきました。

 野田さんはもちろんのこと、他にも今まで名古屋でおたくをしてきてどこかで拝見したことのある方がずらりと並んだこの公演、新選組のおたくとしては解釈違いだったらどうしようという一抹の不安を抱えながらも行ってきました。

 

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芹沢一派

 新選組の関連の創作は芹沢粛清を描くか芹沢一派を一切描かないかのどちらかだと思っています(暴論)。今回は粛清を描く方の作品でした。

 私はSCANPさんのことを全然存じ上げないのですが、憲俊さんが主宰なのですよね。今回の作品は芹沢鴨が中心にいた浪士組の物語だったので、ここに憲俊さんがいたのだなと思いました。私は圧倒的に土方歳三のことが好きなおたくなので、芹沢鴨を中心に据えた新選組の物語はこうなるのか、と新鮮でした。

 私は過去の名古屋おもてなし武将隊のことを殆ど存じ上げないので、日替わりシーンでごとーさんに「俺たち昔はおもてなし」というリリックを放った時「ふーん……」という顔になりました。ふーん……。

 

 新見錦という人物に対してなんとなくずっと嫌な奴だという印象があったのですが、今回の作品は描き方が上手いなと思いました。勝手に金策はするし、そのお金で女遊びはするのですが、法度違反だと言われたら芹沢の制止も聞かずに腹を切る道を選ぶのが良かったです。いいところある~!

 

 今回のお目当ての一人、野田さん演じる平山はずっと平間とコンビのように動いていてとても可愛かったです。

 平山と平間っていつも「どっちが死んでどっちが生き残るんだったっけ?」と一旦考えてしまうのですが、平山が死ぬ方でした。やったー。平山の散り際は逆サイドから観ていたのであまりしっかりとは見られなかったのですが、遠目からでも良かったです。終演後少しお話させていただいた時に、「普通死なない方が出番多くていいんじゃないの?」と聞かれたのですが、私は死に様を見せてくれる役の方が好きです。

 「新選組」のおたくではあるものの、芹沢一派のことはあまりちゃんと見てこなかったので、どうして隻眼なんだろう……と思っていました。史実でした。隻眼なのにちゃんと強くて良かった!

 今回私は殆ど配役を聞かずに観劇したため、冒頭で宮田さんが幕末を生き延びた者として語っている時に「生き延びているということは斎藤か永倉……? あっでも渡部さんが斎藤って仰ってたから永倉か……?」と完全に平間のことを忘却して考えていました。平間が語るのも珍しくて良かったです。

 宮田さんのお芝居を拝見したのは『刃鋼』ぶりだったのですが、(言葉を選ばず表現するならば)やっぱり宮田さんの馬鹿でまっすぐな役は似合うなと思いました。でも『刃鋼』から続けてそういうポジションだったので、今度は全然違うキャラクタの宮田さんのお芝居も観てみたいな……。

 平間は本当にまっすぐな人で、見ていて気持ちが良かったです。

 

 

試衛館組

 試衛館組、一番新鮮だったのは近藤と土方の関係性でした。この二人、創作では近藤がどっしり構えていて土方が厳しく隊を締めるという印象があるのですが、今回は近藤の冷静さや非情な面も強く出ていて新鮮に感じました。

 近藤が最期に名乗りを上げたところ、あれは近藤勇が捕らえられた時は大久保大和を名乗っていたという前提があるからこそ格好良い散り際だと思っているので、平間の言葉でも良いから入れてほしかった……! とおたくは思いました。

 そういえば近藤役の永田さんと新見役の平野さんってワタナベエンターテインメントの方なんですよね。全然現場に行かないくせにWE! プレに入り続けているおたくなので、久しぶりにWE! プレにログインして稽古中のブログを拝見しました。ずっとコンテンツがあるのは存じ上げていたものの全然拝見していなかったのですが、今度『パコ』もあるのでまた覗きに行こうと思います。

 

 土方は個人的には京に上る途中で既に鬼になったくらいの気でいたので、今回はかなり弱い部分や変化に戸惑う面を観られて良かったです。新選組の中でも最も好きなのが土方なので、どういうキャラクタで来るのか身構えていたのですが、鬼の副長の弱い面も観られて少し嬉しかったです。近藤が関係の無い人を利用したり斬り捨てるといつも傷付いたような顔をしているように見えて好きでした。

 土方で一番気になったのはなぜ池田屋に討ち入っていたのかというところでした。でも今回の物語では本命も四国屋ではなく池田屋になっていたから、そういう世界線新選組だったのかもな……。

 あと古高が口を割った時に土方が拷問に参加していなくてしょんぼりしました。『刃鋼』で翔太郎が「新選組だってこうしていた!」と主張していた時に私が思い浮かべていたのがこのシーンだったからです。でもこれもそういう世界線新選組だから……なのかも?

 

 沖田は最初から芹沢について回っていて、強さに憧れる様子がとても辛かったです。沖田が芹沢に憧れれば憧れるほど決別が際立つので、壬生浪士組から新選組へと変わりゆく中で重要なキャラクタだと思いました。

 

 実はずっとお名前を存じ上げていたにも関わらず、お芝居を拝見したことがなかったのが山南役の荒川さん。

 名前を呼ばれる前からとても性格の悪そうな立ち姿で(失礼)、こんなに裏のある顔でで笑える男は山南か新見のどちらかだろうとすぐに思いました。一目でわかる役作り、凄かったです。

 山南も怪我をしない世界線だったな……。

 

 永倉は最後の方まで名乗ることも名前を呼ばれることもなかったのですが、この立ち位置はきっと永倉……! と信じていたため、最後に名乗りを上げているところが観られて良かったです。

 永倉役のフランさんといえば、昨年十月の『ヒモのはなし』で拝見し続けた方! 『ヒモのはなし』のマリとは打って変わってたくさん立ち回りのある格好良い侍の姿を観られて嬉しかったです。

 客出しで少しお話できた際にお写真誘ってくださって本当に嬉しかったです……! またフランさんのご活躍を拝見したいなと思いました!

 

 原田は今回存在しなかった藤堂の要素も兼ねているような気がしました。特に冒頭で血気盛んな姿を見せていたところは藤堂の魁先生を彷彿とさせて、勝手に原田に藤堂を重ねて観ていました。

 

 容保公は浪士組に対して思うところがありながらも芹沢処断について関与しない立場だったのが好きでした。

 そういえば芹沢の暗殺時に試衛館組が浅葱の羽織を着ていたのは少しいやでした。隊服を着ていたら外部犯に見せかけられないので……。八木邸のガイドをしていただいた時に一度羽織を脱いで庭から押し入ったという話を伺った気がするのですが、流石に気のせいかもしれません。

 

 斎藤は近藤と共に容保公に謁見しているところもあり、後に御陵衛士密偵になる素質が描かれている気がして好きでした。

 また、芹沢らと初対面時には山口と名乗ったにも関わらず近藤らと合流してすぐ斎藤と名乗ったのも興味深かったです。芹沢らのことを警戒しているようなあの感じ、齋藤だなぁ……と思いました。

 

 

女性陣

 梅は名前が出た瞬間「この人はこの後芹沢と共に死ぬのだな」と分かってしまい、複雑な気持ちで観ていました。

 借金の取り立てで始まった関係だった芹沢と梅ですが、梅が自分の意思で芹沢の元に来て、自分の意思で芹沢と共に死のうとしたのが短いながら描かれていて好きでした。

 

 糸里は、志士を嫌う気持ちが平間によって解れてきたところを近藤に利用され命を落とした憐れな女性という印象。一番この浪士組から新選組へ、芹沢から近藤へ局長の座が移りゆく中で巻き込まれていた人で、可哀想でしたね……。

 そういえば糸里って山南の恋人ではなかったか? と思ったのですが、それは明里でしたね。あの辺すぐにごっちゃになります。

 

 千代はずっと沖田に好意を寄せている描写が可愛かったです。隊を離れて療養していた沖田についていて、沖田に身請けされたのかなとか、沖田の最期に立ち会えたのだなとか、いろいろ考えられるのが好きでした。

 

 まさはこの物語の中で場を明るくする役割を担っていたように思います。お声が本当にがさがさで心配になりました……。大丈夫かな……。

 

 私が織田作之助のおたくなので突然織田作之助の話をするのですが、織田は「大阪の可能性」という作品の冒頭でこう語っています。

 大阪は「だす」であり、京都は「どす」である。大阪から京都へ行く途中、山崎あたりへ来ると、急に気温が下って、ああ京都へはいったんだなと感ずるという意味の谷崎潤一郎氏の文章を、どこかで読んだことがあるが、大阪の「DAS」が京都の「DOS」と擦れ合っているのも山崎あたりであり、大阪の「DAS」という音は、山崎に近づくにつれて、次第に「A」の強さが薄れて行き、山崎あたりでは「A」と「O」との重なり合った音になって、やがて京都へ近づくにつれて、「O」の音が強くなり、「DOS」となるのである。

 今回洛中に住むまさが「〜だっせ」と言っているところがあって、とても面白かったです! また、名古屋弁と京都弁は近しいものがあるので、京都弁のイントネーションで話しているつもりが名古屋弁になっているところもあり、方言を聞くと楽しくなる卒論テーマが方言のおたくとしてはとても興味深い公演でした。

 なお織田作之助の「大阪の可能性」は面白い文章なので是非読んでください。

織田作之助 大阪の可能性

 

 

岡田以蔵

 普段ナゴヤ座で名古屋参十郎さんとしてよく拝見しているごとーさんですが、実は外部公演はほとんど拝見したことがありません。今回はゲストで出演時間は短いものの格好良かったよ、と友人から聞き、それは楽しみだと意気揚々向かったところ、前日のゲスト回と異なりネタ回だったので、格好良いところも拝見したかった……! とじたばたしました。

 他の回では何故か劇団EXILE小澤雄太さんもご出演があって、一時期LDHに足を突っ込んだおたくとしてはそちらの回も観たかったなと思いました。

 

 

※この下マイナスです。

 今回の作品は殺陣が多かったのですが、(私がサイドの中段から見ていたからかもしれませんが)ほぼすべての立ち回りが衝撃波で倒しているように見えてあまりのめり込めませんでした……。

 ちくさ座は円形劇場なので、どこから見ても当たっている殺陣ってとても難しいと思うのですが、芹沢が中心で切り伏せていくシーンとかはもう一歩囲みを小さくできたらもっと当たっているように見えたりしないかな……と素人ながら考えてしまいました。強欲なおたくなので、物語でも芝居でも殺陣でも演出でも音楽でもわくわくしたいです。

 

 

 今回たくさん拝見したことのある役者さんが出ておられて、あの時のあの方が今回はこんな役で……と思いながら観られたのが楽しかったです。今回初めて拝見した方もまた拝見できたら嬉しいです!