静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

MACBETH 2024.9.5-2024.9.9

9/5 『MACBETH -魔苦減須-』公開ゲネプロ@ちくさ座

9/6 『MACBETH -魔苦減須-』昼公演・夜公演@ちくさ座

9/7 『MACBETH -魔苦減須-』昼公演・夜公演@ちくさ座

9/8 『MACBETH -魔苦減須-』昼公演・夜公演@ちくさ座

9/9 『MACBETH -魔苦減須-』アフターパーティー@Electric Lady Land

 

 

~配役~

魔苦減須:名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

魔苦減須夫人:名古屋虎之助さん(以下「トラスケさん」)

弾漢:名古屋参九郎さん(以下「サンキューさん」)

丸火武:名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)

蛮行:名古屋参十郎さん(以下「ジューローさん」)

斧離按須:名古屋参永已さん(以下「サンエーさん」)

真駆太夫:名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエモンさん」)

獅威倭亜怒:名古屋山三郎さん(以下「座長」)

珠迩亜々怒:名古屋参雀久さん(以下「サンジャクさん」)

魔女:名古屋参史郎さん(以下「シロウさん」)・山本航大さん・加藤大輔さん(以下「だいちゃんさん」)

アクションチーム:水谷健さん・MURA3さん

 

 

 2020年にナゴヤ座にて上演していた『MACBETH』が極上ナゴヤカブキとなって復活! しかも主演はトラザさんとのことで、ゲネプロから千穐楽まで全力で観劇してきました。

 

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魔苦減須

 以前ナゴヤ座で上演されていた頃のトラザさんの魔苦減須は、太陽の面を持っていました。トラザさんが演じるお役にはそういう要素が入ることが多いと思っていて、その例が「YAJIKITA」シリーズの弥次郎兵衛や『SEITEN TAISEN』の孫悟空です。当時の魔苦減須も、弾漢を殺すために仮面を被る瞬間まではその太陽のような面が強い人だったと思っています。ただいるだけで周りの人を惹きつける人格と強さを兼ね備えた魔苦減須はきっと、弾漢を殺さなくともいずれ征夷大将軍になる存在です。そんな魔苦減須を凶行に駆り立てたのは自ら蓋をしてきた「身分によって虐げられてきた」という負の感情であり、それに蓋をせずずっと静かに炎を燃やし続けてきた魔苦減須夫人の言葉だと思います。

 一方で、今回の魔苦減須は冒頭で蝦夷の姫の呪いを受けることもあり、あの頃の太陽のようなカラッとした面を見せることはありません。「身分によって虐げられてきた」という描写もほぼされず、その代わりに、武をもって戦を平定し平和な世へ民を導くという明確な目標があります。今回の魔苦減須はきっと、呪いに邪心を増幅されていなければずっと弾漢や丸火武の下で仕え続けていて、本人もそれで良かったのだろうと思いました。

 

 個人的に興味深かったのは魔苦減須の持つ幼さでした。

 魔苦減須は泣き出しそうな顔をする時よく袴を強く握りしめていました。それが幼い子供のようで、ふと魔苦減須は大人になりきれなかったのかもしれないな、と思いました。魔苦減須夫人がそれをそっと受け入れていて、きっと昔からそうだったのだろうなと思いました。

 かと思うとどこかで冷静な魔苦減須もいて、斧離按須の殺害を目論むところでも、子供の椅子取りゲームのように玉座に座って権威を示す一方、玉座にさえ戻れば隠しているナイフが取れると考えているようで大好きでした!

 

 魔苦減須に殺された者のうち、弾漢と蛮行は事切れる時に魔苦減須に手を伸ばしていたのですが、魔苦減須夫人は手を伸ばさないところも印象的でした。他の者はまだ死ぬ訳にはいかないという未練があるのに対して、魔苦減須夫人にとって死は救いとなったからなのかなと思っています。一方で、魔苦減須は蝦夷の姫が安らかな眠りにつく時に蝦夷の姫に対して手を伸ばしていて好きでした! 増幅された野心と共に堕ちるところまで堕ちた魔苦減須にとっては、呪いが自分が戦い続ける中である種の理由であり救いになっていたのだろうと思います。

 呪いに増幅されていたとはいえ、魔苦減須が主君に親友、妻、そして大勢の無関係な民を殺してきたのは魔苦減須自身の選択であり、魔苦減須の負うべき業なので、その罪を皆で背負うことを提案する丸火武は本当に腹立たしく思えました。魔苦減須が丸火武を斬りつけ「今更戻れるか」と叫ぶ度、そうだよな、と同調して観ていました。

 

 蛮行との森で予言を受けるシーンでは、「ただこの国を平和にしたいだけだ」と語る魔苦減須が好きでした。このシーン、妙にしっとりとした質感があるのですよね……。何でもないタイミングで突然友への感謝を述べるということが、メタ的に不穏さを伝えているような印象がありました。

 予言を受けた魔苦減須が予言を笑い飛ばせず動揺していたのも好きでした。魔苦減須は、あの時初めて自分が王になることを考えたのではないでしょうか。その後呪いによって増幅された邪心によって、「自分が手を下すことはない」と思いながらも、その選択肢が浮かんだからこそ正気に戻った魔苦減須が「俺は今なんと言ったのだ」と呆然としていたのだろうと思います。

 このシーン、予言を託した魔女たちが魔苦減須を通り抜けていく演出も呪いは蛮行でなく魔苦減須を選んだのだなと実感できて好きでした。

 

 弾漢と手合わせをするシーンでは呪いに突き動かされた魔苦減須が本気で斬ろうとする中で玉座のある檀上に上がるところが好きでした。あの動線を考えたのはどなたなのでしょうか……。今でなくてもいずれ魔苦減須は弾漢を殺し王になるのだ、と象徴していたように感じました。はっとして頭を下げる魔苦減須は弾漢が笑うと一層姿勢を低くしていて、この場で手打ちにされる可能性も考えたのかな、と思いました。弾漢から賜った剣についてもそれほど喜ぶ様子がなく、とても新鮮でした。

 弾漢が次期将軍を丸火武に推した時の「あのような者に国を任せていいのか」という言葉は、本心ではあったのだろうな……。

 

 最期の大暴れでは、目も見えぬまま力を振り絞り感覚で相手の位置に当たりをつけて斬りかかっている様子が本当に好きでした! 丸火武が何処にいるかも分からず、よたよたと動く様が魔苦減須の終焉を示しているようでずっと苦しい気持ちと共に応援していました。

 

 冥府に堕ちた魔苦減須は、再び王となる予言を受け冥府魔道を突き進む覚悟を決めますが、この決断は呪いによって野心が増幅された結果ではなく魔苦減須が自分で決めた道だったため、本当に嬉しかったです! 迫り上がった舞台上で亡者の頂点に立つ魔苦減須が本当に格好良くて、この光景を観るためにここまで来たんだなぁと感じました。ナゴヤ座で上演していた『MACBETH』では、冥府に堕ちた魔苦減須に再び剣を握らせるのが魔苦減須夫人(の役の方)で、それが弾漢殺害とリンクしていて大好きだったのですが、今回は魔苦減須が自分で剣を取る代わりに魔苦減須夫人が冥府でも共に進むことを宣言していて、とても気高く美しく見えました。

 

 魔苦減須については正直オーディオコメンタリーにした方が早いくらいたくさん感想がありますが、長くなりすぎるので一旦幕とします。

 

 

魔苦減須夫人

 魔苦減須夫人は野心の強い女性だと思います。ナゴヤ座で上演していた頃はその野心の炎でもって嗾ける強かさと手にこびりついた血の幻影に翻弄される二面性がありましたが、今回の魔苦減須夫人はどちらかというと野心はあっても呪いがなければ魔苦減須と共に弾漢に尽くしていたのではないかと思います。呪いに支配される前の魔苦減須と共に新しい城の窓を開けてはしゃぐ魔苦減須夫人はとても無邪気で、だからこそ王殺しを経て眠りを失ってしまったのだろうな……。

 夫人はどのタイミングで呪いを受けたのでしょうか。蝦夷の姫と器の形が似ていたから呪いも入りやすかったのかな……。

 

 宴のシーンでは魔苦減須夫人がシモンによる黒ひげ危機一髪に紛れて眠り薬を混ぜた酒を注いで周っていて、その狡猾さ、抜け目なさが大好きでした。魔苦減須に酒を注ぎ終わったことを淡々と報告したり、獅威倭亜怒と珠迩亜々怒が酒に手を付けていないことを把握していたりと、魔苦減須夫人がいなければ弾漢暗殺はできなかっただろうとつくづく思います。

 

 魔苦減須夫人が魔苦減須からの手紙を読むシーンで幼き頃を思い出す台詞は、ナゴヤ座で上演していた当時からずっと島崎藤村の「初恋」を想起させる言葉選びだなと思っていて、その影響で幼い頃の魔苦減須と魔苦減須夫人の関係を綺麗な思い出として受け取っている自覚があります。本編中ではほとんど二人のゆったりとした時間を見られませんでしたが、カーテンコールのあと他の皆様が捌けるのを待つ間、舞台中央で魔苦減須と魔苦減須夫人が座ってお話していて、これはあったかもしれない過去でありあったかもしれない未来なのだなと思ってじんわりときました。なお魔苦減須夫人が魔苦減須の汗を拭いていた回は力強く手拭いを押し付けていて、この夫人パワータイプだ……! と思いました。

 

 今回トラザさんの魔苦減須がずっと苦しそうだったので、隣にいる魔苦減須夫人がトラザさんを一番よくご存知であろうトラスケさんだったことにおたくはずっと救われていました。千穐楽で「よく頑張りました」という言葉が出てくるのはきっとトラスケさんだったからこそだと思います。本当にありがとうございました……!

 

 

弾漢

 今回の弾漢は魔苦減須や魔苦減須夫人に対し百姓の出であることを特に何も言わないところが好きでした。だからこそ魔苦減須も弾漢の情を認めていたのだと思います。ナゴヤ座版とは違い、予言によって前王を殺したという描写のない弾漢だからこそ、この情の深い王というキャラクタが成立していたような気がしました。

 

 弾漢はずっと丸火武に対し期待を掛けていたのだと思いますが、それを直接言わなかったがために丸火武が覚悟を持てず「覇気がない」という魔苦減須の評価に繋がったのではなかろうか……と考えてしまいます。弾漢の丸火武への態度を見ているとどうも「TRUMP」シリーズのダリとラファエロのように見えて仕方がないので、弾漢は丸火武と話せるうちにちゃんと意思の疎通を図るべきだったと思います。初めから丸火武が覚悟を持てていれば、魔苦減須が見限ることもなかったのではないかな……。

 

 

丸火武

 丸火武はゲネプロで拝見した時に惜しいな、と思ったキャラクタでした。というのも、丸火武はナゴヤ座で上演されていた頃は「魔苦減須の企みに気が付き、一度は真駆太夫をも無能な振りで欺く切れ者」というという(おたくが好きな)設定だったからです。これが「頭は切れるが覚悟のない腰抜けから覚悟を決め王になった者」という設定になると、どうしてもキャラクタが弱くなったように感じてしまい、あの頃の丸火武の方が良かったな……と思ってしまいました。

 ただ丸火武は回を重ねるごとに今回の『MACBETH』の丸火武として見られるようになって良かったです!

 

 私はずっと魔苦減須にチャンネルを合わせてこの『MACBETH』という作品を見ていたため、どうしても丸火武に敵愾心を抱いてしまいます。特に蝦夷の姫と勝手に和解し、蝦夷の姫に安らかな眠りを与え、あまつさえ魔苦減須の罪を自分も背負おうとするところが本当に悔しくて腹立たしくて涙が出ました。

 でも、「これでお前は英雄だ」と告げる魔苦減須が自分の剣で首を掻っ切るところでとても傷付いた表情をしていて、それが見えた瞬間「やってやったぞ!」と思いました。

 

 丸火武軍が決起集会をしているあたり、ずっと私はそちら側にはつかないぞ、という意思を持って観ていました。でもあのシーン、丸火武派として観ていたら客席が明るくなると共に自分が観客から群衆になるという体験ができて気持ち良いだろうなと思います。

 

 

蛮行

 蛮行は今回とても眩しく感じた役どころでした。そもそもジューローさんのお芝居が持つ資質でもあると思うのですが、蛮行はどこまでもまっすぐ熱く生きていて、こんな人の子孫が王となった暁には人心を惹き付けてしまいそうで怖いなと思いました。私が魔苦減須だったら絶対蛮行から手にかけます。

 ナゴヤ座で上演していた頃は斧離按須がいなかったため、子孫を残される前に蛮行を殺すしかないという流れでしたが、今回はあくまで魔苦減須が殺そうとしたのは斧離按須で、それを止めようとした流れで蛮行が殺されることになったため、魔苦減須と蛮行の間に確かにあったはずの友情が壊れた瞬間が明確にあって好きでした。蛮行、魔苦減須が弾漢を殺害したという可能性を考えながらも一度は王の家臣として使える覚悟を持っていたのが良かった……!

 

 斧離按須との関係性は、蛮行が死んでからが本番という感じがしました。斧を通じて斧離按須と心を交わしているようなところがあって好きでした。

 

 

斧離按須

 斧離按須は子供世代の中でどちらかというと目立たない方だと思います。丸火武は頭脳明晰で、珠迩亜々怒は身体能力が高い。その中で斧離按須はそのどちらも飛びぬけた長所ではないという印象があり、斧離按須自身もそれをコンプレックスに感じているのだろうなと思いました。でも、斧離按須の長けているところは丸火武や珠迩亜々怒とは異なる分野であり、それが精神力だったのだろうと自分の足に刀を突き刺す斧離按須を見ながら思いました。

 

 斧離按須は魔女からいずれ王になると予言を受けたにも関わらず、予言に飲まれず魔苦減須にならなかったことがとても羨ましかったです。魔苦減須には蛮行がいたにも関わらず予言に突き動かされてしまったので……。悔しい!

 

 それはそうと、獅威倭亜怒を殺したのは魔女たちであり(確かに傷は負わせたものの)魔苦減須ではないので、勘違いを解きたいところです。斧離按須としては魔苦減須憎しになっているのは分かりますが……!

 

 そして『MACBETH』におけるサンエーさんが生み出したキャラクタといえば、ソクラテス・シモンです。実は以前ナゴヤ座で上演していた頃、サンエーさんの魔女は何度か拝見していたのですが、千穐楽以外ずっと蚊取線香たべ美だったため、実は思い入れは薄め。ですが、「短パン王」などの懐かしのネタもあってとても嬉しかったです! 四年前の千穐楽の日、「短パン王」と呼ばれて走り回っていたトラザさんの弾漢を思い出しました。シモンが大暴れしている間、ずっと魔苦減須が苦虫を嚙み潰したような顔で「早く進めてくれ!」と言っていて、このシーンは胃が痛かったろうなと思いました。薬入りの酒は飲ませなければならないし皆大騒ぎだし……。

 また、シモンが席を外している斧離按須に触れて「窓の外を眺めていた」と言う度鬱々とした斧離按須を思い浮かべて笑ってしまいました。「父親がこんなだから」とシモンが言っていましたが、斧離按須としても父と一緒に宴で燥ぐ気持ちにはなれなかったのかな……。

 

 

真駆太夫

 ダエモンさんが真駆太夫として登場するのは二幕からなのですが、やっぱり真駆太夫は安定感があり、出てくると重厚感が増します。

 二日目から追加された演出だったと思うのですが、最後の大立ち回りの際に魔苦減須の目元にべっとりと血糊をつけるところで真駆太夫ががっしりと魔苦減須の頭を掴んでいて、その鬼気迫る様子がとても好きでした。真駆太夫があまりにも冷静を保っているためにいつも一度忘れてしまうのですが、真駆太夫の妻子は魔苦減須に殺されているのですよね……。

 

 森に紛れて進軍するシーンは、いつも「こっちは森が動いて真剣に動揺しているのに……!」と思いながら観て(いたりいなかったりして)いました。千穐楽は対面からオペラグラスで魔苦減須を観ていたのですが、真駆太夫が連れてきた麗麗さんで笑いが起きていて、つい一瞬見てしまったのが悔しかったです。あんなの見てしまう……!

 

 

獅威倭亜怒

 獅威倭亜怒は三人の父親の中で最も「父として」尊敬できるキャラクタだと思います。弾漢のような偉大さ、蛮行のような親しみやすさを両方持っていたからこそ、他の親子と違い登場した時からずっと珠迩亜々怒が明確に獅威倭亜怒のことを尊敬している描写が入っていたのだと思います。

 珠迩亜々怒のことを「ジュニア」と呼んでいたのも好きでした。

 

 また、獅威倭亜怒は一貫して「正確な判断ができる存在」として描かれていたとも思います。獅威倭亜怒は眠り薬が混ぜられた酒を飲まないよう珠迩亜々怒に目配せをしたり、魔苦減須の下につこうと言う丸火武に喝を入れたりして、最悪の事態は防いできました。獅威倭亜怒、人を信じやすい蛮行に対して頭を抱えていたりしませんか……?

 

 余談ですが、冒頭のシーンでのアクションモブの座長の起き上がりが本当に気味が悪くて良かったです。死人が魔苦減須と蛮行を襲う場面の立ち回りは座長がきっかけですが、斬りかかるまでの間が長く、この不安にさせる間が大好きでした!

 

 

珠迩亜々怒

 珠迩亜々怒は何もかもが上手くて、毎公演「サンジャクさんって凄い……」と噛みしめて帰る羽目になりました。事あるごとに上手いな……と言っているような気がしなくもない。

 珠迩亜々怒は登場のシーンから身のこなしの良さを見せていて、息子である珠迩亜々怒がこれほどまでに凄いのであれば父親、ひいては西国の力は強大なのだろうと思わせる力がありました。

 

 珠迩亜々怒は西国の武将の息子という立場であるため、あくまで主君は西国の王です。それでも尊敬する父が認めているということは丸火武も凄い存在なのだ、と信じてついていくことができるのは素直で良いことだし、珠迩亜々怒自身も丸火武の頭の良さを認めているのが好きでした。丸火武に喝を入れてからはかなり態度が変わってフランクになっていて、本来の珠迩亜々怒はこんな話し方なのだなと分かるのも好みでした。丸火武は珠迩亜々怒にとって直接の主君というわけではないので、あの一件以来対等な友人関係に近いものが築かれていて良かったです。

 

 それにしてもカーテンコールで登場する時の跳躍が日に日に高くなっていったように感じて凄かったです。毎回客席から声が漏れ聞こえるのも面白かったです。あれは声も出る。

 

 

魔女

 以前ナゴヤ座で上演していた際は一人で演じられていた魔女ですが、今回は三人に身体が分かれました。そのため得体の知れない恐ろしさよりも妖しさが増していて好きでした! 冒頭で三魔女がどんどん声を重ねていってユニゾンになるところ、毎公演ぞっとしました。あと魔女のシーンで一番好きなのは、魔苦減須が弾漢を殺した時の「魔苦減須は眠りを殺した」と口々に言うシーン。弾漢の寝所を覆っている幕から顔を出して口々に魔苦減須に呪いの言葉をかける様子が幻のようで、ナゴヤ座で拝見していた頃に魔女は魔苦減須の見る幻覚なのかもしれないと思っていたことを思い出しました。

 

 冒頭のシーンは蝦夷の姫の体内にいる状態だったのですね。二度目に拝見してああそうだったのか! と衝撃でした。またここは蝦夷の姫の腹部に魔女たちの心臓と同じ光が灯っていて、それが見えた時に細かい……! と舌を巻きました。

 本当は各魔女の持つ名前の意味を考えながら観たかったのですが、毎回魔苦減須に思考のリソースを奪われてしまって未だ言葉が見つかっていません。

 

 今回の魔女たちは、座員であるシロウさんはもちろん、『シンの明星』からほぼずっと拝見している山本さん、極上ナゴヤカブキもいよいよ常連のだいちゃんさんと、もう見慣れた顔触れでとても嬉しかったです! それぞれ魔女という役の魅せ方が少しずつ違っていたのも好きでした。

 

 

演出・照明

 演出も証明もいつだって門外漢で(お芝居もですが)、どこまでがどういう意図で作られていたのか一観客に過ぎないおたくには全然わからないのですが、今回毎回変わる魔苦減須のお芝居を一番輝く形で届けてくださったのが演出と照明なのだと思います。

 本当に今回の『MACBETH』を堪能させてくださってありがとうございました!

 

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後夜祭

~セットリスト~

1.CLIMAX CITY NAGOYA
(MC)
2.ふぁんきーふぃーばー
3.どえりゃ∞INFINITY
4.えらいもんで
5.近藤りょーじかかってこいよ
(MC)
6.キットカット(略)
(ナゴヤ座と麗麗の対決コーナー)
7.開運GOLDRUSH
8.DEADMAN
9.N・G・Y
10.円頓寺音頭
(EN)
11.MADOU
12.DERA☆GROOVE
13.紫風流閃

 やっと後夜祭の感想に漕ぎつけた……! 千穐楽の翌日、大須で後夜祭がありました! 本編の重苦しさは放り投げて、ステージ上に15人がひしめき合うライブを楽しんできました。

 

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 開場後、おたくたちが必死にガチャを回している中紅愛さんとトラザさんが登場し前説があったのですが、この時必死でガチャを回していたためあまり聞いていませんでした……。うろ覚えですが、皆で平和に楽しく! というようなことを仰っていたと思います。トラザさんのお着物が最近よく着ておられる源氏香柄で帯があまりお見掛けした記憶のない菊柄だったことは覚えています。

 

 開幕と共に以前Lives NAGOYAで聞いた覚えのある曲が流れ、ステージ上にシロウさんがご登場! これは口上だ! と察し、おたくはおひねりを握りしめました。このおたくは前方に入っていたのでオヒネリが飛んでいく様子は見えなかったのですが、目の前に溜まっていくオヒネリが本当に大量で、本当に良い光景だなと思いました。

 

 口上が終わり「ナゴヤ座!」のオオムコウをかけると始まったのが「CLIMAX CITY NAGOYA」! ステージ上にずらりと全座員と麗麗さんが揃うと本当にぎゅうぎゅうで目が足りませんでした。またこの曲はトラザさんも歌ってらしたのですが、前日までの魔苦減須で喉を使い切っていたわりにちゃんとお歌が聞こえて、一晩たっぷりケアしてくださったのだろうなと思いました。

 

 一度ナゴヤ座は下がり麗麗さんだけになったところで、二曲目は「ふぁんきーふぃーばー」! この曲は先日のツアーで一度拝見しただけだったためフリがほとんどわからなかったのですが、曲自体は聞いていたのと楽しい曲調なので雰囲気で楽しめました!

 

 そしてここからは座員を交えて曲を披露! トップバッターはシロウさんとトラスケさんで「どえりゃ∞INFINITY」。シロウさんがこの曲を歌いたいと選んだそうで、本来はシロウさんだけが出る予定が、何故か出来上がったセットリストにはトラスケさんのお名前もあったそう。「何らかはやります」と仰ったトラスケさんが持ってきたのはなんとメイク道具……! お写真で拝見していたメイク道具の数々を使ってトラスケさんのお顔がどんどん魔苦減須夫人になっていくところを観ているのがとても楽しかったです。

 シロウさんは緊張のあまりがちがちになっておられましたが、意外と歌声が甘めで可愛かったです! 座員によるカラオケ大会、いつでもお待ちしております。

 

 続いて「えらいもんで」で登場したのは丸火武と真駆太夫。サンスケさんと「えらいもんで」といえば三月に行われたコンセプトワンマンで拝見した組み合わせ。今回はダエモンさんが煽ったり「えらーい!」に合わせて超絶居合切りを披露したり辻斬りになったりしていてとても面白かったです。

 曲終わりだったか曲前だったか失念しましたが、婆那無の森で近藤りょーじさんが着ておられた森の衣装はダエモンさんの自作だそうで、本当は全員分用意しようとしたものの、思ったより高くついたためやめたと仰っていて面白かったです。

 あとこの時何故か真駆太夫がすっぴんで何故……? と思っていましたが、その謎はこの後ちゃんと解けました。

 

 サンスケさんとダエモンさんが捌けて登場したのはソクラテス・シモン! 銀さんのベースをシモンが使い、代わりに銀さんがギターに入り、りょーじさんがマイクを握るフォーメーション。……ということは、五曲目は「近藤りょーじかかってこいよ」! 

 途中で不穏な音と共に麗麗さんたちが祠に閉じ込められた瞬間、『SAZEN2』の後夜祭を思い出しました。もちろん祠の封印を解くのはジューローさん。前回は新次郎のお衣装でしたが、今回は蛮行のお衣装で登場でした! もはやジューローさんの持ち歌と言って過言ではない「祠のうた」を今回も披露してくださって、無事大笑いしました。

 確か紅愛さんが「皆これを期待してたでしょ」と仰っていたのですが、このおたくは完全に忘却していました。

 

 シモンが退場すると入れ替わりでやってきたのは魔苦減須! 魔苦減須と蛮行が「さっき仲直りした」「昨日はぶった斬ってごめんな」「ちょっと痛かった(♡)」と仲良く会話していて、とても幸せ空間でした。というかあれだけのことがあったにも関わらず許せる蛮行ってやっぱり度量が深いと思います。

 魔苦減須と蛮行が弾漢を呼び込み六曲目は「キットカット(略)」! メインで歌うのはもちろん王である弾漢。両側で賑やかしている魔苦減須・蛮行コンビ、とても可愛かったのですが、突然サビで弾漢の口にキットカットを詰め込み始めて、「こいつら絶対悪友だ!」と思いました。予言を受ける直前でしっとりと友情を確認していましたが、絶対最近まで落ち着いていなかった。絶対。最後の方では魔苦減須と蛮行がフロアに降りてお菓子を配りに行ったため、キットカットの袋を持った弾漢が最前列のおたくたちにキットカットを配り始めたりりょーじさんの口にキットカットを詰め込んだりしていてやりたい放題でした。日ノ本ってもしかして愉快な国ですか?

 

 「キットカット(略)」を終えて、続いてナゴヤ座と麗麗の対決コーナーに! 団結力を見せるべく、両チームから一人選出し、魔苦減須が弾漢を殺害するシーンを再現してこの後何をするのかを当てるというルールで選出されたのがりょーじさんとトラスケさん。もうこのお二人が選ばれた時点できっと面白いことが分かってしまいます。

 先攻となったりょーじさんが魔苦減須の台詞を言い始めると、シリアスな芝居があまりにも上手くてフロアもステージもざわつきました。もっとお芝居しているところが観たい……! 結末は前日のシモンのコーナーで登場したオネエが弾漢にキスをしようとして暗転というオチで笑ってしまいました。

 一方トラスケさんは冒頭から鬼才が炸裂していて立ち姿から可笑しく笑ってしまったのですが、口を開くと「刀でい! 本物かなあ~?」と言い出して本当に呼吸ができなくなりました。

 勝負の結果は麗麗さんの勝利で負けたトラスケさんが一発ギャグをすることになったのですが、その前のトラスケさんがあまりにもインパクトが強かったため何も記憶に残っていません。

 あと地味に剣を浮かばせる役を担当していた珠迩亜々怒が大変そうで面白かったです。

 

 大笑いを巻き起こした対決コーナーを終え七曲目は「開運GOLDRUSH」! ここのパート、担当が獅威倭亜怒・珠迩亜々怒・魔女という組み合わせでとても新鮮でした。メインボーカル座長による「開運GOLDRUSH」、タメがとても長くてちょっと笑ってしまったのですが、がなりがとても効いていて良かったです! 賑やかしている珠迩亜々怒と魔女もとても可愛くて好きでした。

 

 次は誰が出てくるのだろうか……、と思っていると、「We Will Rock You」のリズムが。これはまさか加藤六灸……!? あっだからずっとすっぴんで出ていた……!? とみるみるうちに謎が解け、八曲目はダエモンさんによる「DEADMAN」! 六灸と「DEADMAN」という組み合わせが似合いすぎていて面白かったです。

 

 世界観が似合いすぎている「DEADMAN」が終わるとまたもや登場したのは魔苦減須。「どうしてもやり残したことがあるという者がいて……」「呼んでもよろしいですか、我が妻を」と呼ばれ出てきたのは五月に観た記憶しかないクワガタの様ないかつい形をしたギターを携えた魔苦減須夫人。おたくたちもこれを待っていました。多分。もちろん曲は「N・G・Y」!

 あまりにも夫人とギターの親和性が高すぎて誰よりもヴィジュアル系バンドマンだった魔苦減須夫人、大好きです。あと夢呂さんが「見た目通りの音がしやがる~」と仰っていて面白かったです。

 以前はトラザさん・トラスケさんとして拝見した「N・G・Y」ですが、今回は魔苦減須夫妻で観られてとても嬉しかったです!

 

 ここまでずっとライブを主導してきてくださった麗麗さんが一度捌け始まったのは「円頓寺音頭」……! 初っ端から目の前でトラザさんが刀を振っていて本当に悲鳴が漏れました。こんなの聞いてないし良すぎる……! ところどころ忍者隠密隊の「忍者演武」を彷彿させる動きがあって好きだなあと思って拝見していたのですが、振付はなんとサンジャクさんとのこと! やっぱりサンジャクさんって天才かもしれない。

 今回の「円頓寺音頭」は『MACBETH』仕様だったので、他の作品でも見てみたいです!

 

 アンコール(した記憶がないのですがアンコール枠らしい)一曲目は今作『MACBETH』の主題歌である「MADOU」! 前日にちくさ座で拝見した時は通称「魔法の音」に合わせての披露だったので、初生演奏でした! 公演がすべて終わった状態で聴く「MADOU」、歌詞の解釈に頭を使う余裕があってとても良かったです。

 

 そして再びナゴヤ座も勢ぞろいして「DERA☆GROOVE」! 最後ならではの高揚感の中で拝見する「DERA☆GROOVE」、とても楽しくて大いに飛び跳ねました! ナゴヤ座の皆様も歌っておられて、コラボの良さをつくづく実感しました。

 

 最後は時間がギリギリだったのですが、皆でお願いをしてラスト一曲「紫風流閃」! 「SAZEN」シリーズから繋がったご縁がここまで繋がっているのだなあと改めて実感しました。

 ステージ上の皆様が本当に楽しそうで、名古屋のエンターテインメントにかれこれ六年人生を捧げているおたくはとても嬉しかったです!

 

 おたくが泣きのガチャを回している間に大慌てで始まったのは大サイン大会! 15人がずらりと並んでサイン対応をしていて面白かったです。広いライブハウスってすごい!

 

 そして来月にはコンセプトワンマンライブ『MACBETH』の開催も決定! こちらにトラザさんがご出演されるとのことで、再び魔苦減須に会えることをとても楽しみにしております!!

 

 

 極上ナゴヤカブキ『MACBETH』、本当にお疲れ様でした……! 毎日が本当に幸せでした!

 新作『スケロクブギ!』も楽しみです!