12/27 かうちぽてと旗揚げ公演『桜の下で君と』昼公演@シアターココ
〜配役〜
阿部浩貴/久保玄七:ごとーあきらさん
竹森巧/関根一郎/さっちゃん:永田祐己さん
前説/語り:平山貴大さん
ずっと気になっていたかうちぽてと旗揚げ公演、ごとーさんのファンの方に誘っていただき、初日公演を拝見してきました!
今回はどんな作品なのかほとんど知らないまま劇場に向かったのですが、特攻隊の話だとは聞いていたため、劇場の外にあったかうちぽてとのお二人のポスターは絶対他に何かあったのでは? と思いました。
元は竹森さんと阿部さんからなる芸人コンビ、アップダウンさんが昔上演した台本とのこと。私はお笑いには疎いのですが、きっと初演時は、普段ネタをやる時のアップダウンさんという、役と演者の狭間のようなお二人が、関根と久保を演じていたのだろうと思います。
それが今回はごとーさんと永田さんが「アップダウン」という役を被ることでより一層枠構造が明確になっていて興味深かったです。また面白いことに、久保と関根が持つキャラクタ性や関係性がごとーさんと永田さんに気持ち良く落とし込まれていて好きでした。
アップダウンさんのことは存じ上げないのですが、きっと歌と絵が得意でいらっしゃるのかなと推察できる構成だったのも面白かったです。かうちぽてとのお二人は、お歌があまり得意でないごとーさんと音楽に精通している永田さんという印象があって、劇中で歌うと分かった瞬間、物凄い挑戦なのでは? と思いました。
永田さんは本当に歌がお上手で、台詞を言うように歌い方に感情を載せていて素敵でした。また、ごとーさんは音程自体は怪しいところが多いながら、力一杯久保らしく歌っておられて、芝居の中の歌の良さは音程ではないのだなあと気付きを得ました。
関根は久保が入校してきた時から久保のことを気にかけていたのが好きでした。兄らに甘えていた久保は寝坊ばかりの問題児ですが、それが関根にとっては自身の弟のように思えていたのだろうし、家族の話をしたことで厳しい上下関係の中にあった二人が自然と深く打ち解けた関係性になっていくのが良かったです。
特攻隊の物語である以上、ある程度ストーリーの結末は読めたものの、本来は特攻隊に選ばれない関根が志願したこと、妻・美智子がその意を汲んで入水したこと、そして二人が特攻の成功を見届ける前に死んでいたことなど、予想外のことも多くあって面白かったです。
ラストシーンは、二人で飛行機に乗っていたものの、先に久保が命を落としていなければ関根が久保と共に操縦するということは起こり得なくて、真実がどうであれ、とても良い脚色だったも思います。また、二人が生きている人間からただの肉塊になった瞬間の脱力がゾッとするほど美しくて、だからこそ散りゆく桜に喩えられるのだと理解してしまって残酷だなと思いました。ここ、照明が真っ赤だったのも狂い咲きの桜のようで好きでした。
私のような無感動タイプが何を言っても白々しいなと常に思っているのですが、死後の二人が桜の下で会いたい人達に会えたところでは良かったなと思いました。
「戦争」を描いた作品って、感想を言葉にしようとするとどうしても「戦争はいけないと思った」のような陳腐な言葉になってしまうことが多くて得意ではないのですが、今回はどちらかというと「伝えること」「語り継ぐこと」に焦点が置かれているように思えてすんなりと受け入れられました。
現在、初演の『桜の下で君と』が無料公開されているとのことなので、この年末年始のお休みの間に観たいです……! そういえば終演後に公開されていたエンディング映像もまだ観られていないので、こちらもしっかり観るのが楽しみです。
今回のかうちぽてと旗揚げ公演、直前までナゴヤ座におられた中で作り上げたのが本当にお見事だと思っていて、このお二人が見せるお芝居の世界をまた観たいなと思いました。年末に良い公演をありがとうございました!