静心なくお金飛ぶらむ

オタクの現場備忘録。内容と語彙がない。

Akou 47 Revengers 2025.11.12-2025.11.16

11/12 『Akou 47 Revengers』昼公演・夜公演@ナゴヤ

11/14 『Akou 47 Revengers』昼公演・夜公演@ナゴヤ

11/15 『Akou 47 Revengers』昼公演・夜公演@ナゴヤ

11/16 『Akou 47 Revengers』昼公演・夜公演@ナゴヤ

 

 

 

 

11/12

~配役~

大石内蔵助:名古屋参九郎さん(以下「サンキューさん」)

浅野内匠頭/遊女A:名古屋虎之助さん(以下「トラスケさん」)

堀部安兵衛:名古屋参永已さん(以下「サンエーさん」)

堀部弥兵衛:名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

吉良上野介:名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエモンさん」)

小林平八郎:名古屋参十郎さん(以下「ジューローさん」)

清水一学:名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)

 この日は個人的に大好きなサンキューさんの大石とトラスケさんの浅野の組み合わせ。千穐楽が見えてきた今、この組み合わせももうないかもしれないと思うと何だか寂しさがあります。

 昼公演の大石は最後の南瓜を包む時に一切納得しておらず、ダエモンさんの吉良の憎らしさが勝った回だったなと思います。ここでサンキューさんの大石が怒りを主に出す印象があまりなく、新鮮で面白かったです。

 夜公演はとても悲しみが強く、前回サンキューさんが大石を演じておられた10月31日の夜公演に空気が近かったように思います。南瓜を包みながら弥兵衛と視線を交わして「これでいいよな」「間違っていないよな」と確認しているようで、それがとても良かったです。昼公演とは違い、安兵衛にも勝鬨を上げる前に包んだ南瓜を見せていて、だからこそ全員が納得をした上で勝鬨を上げられていたのがとても好きでした。南瓜を包む際にとても泣きそうになっておられて、それを見守る弥兵衛に一度頷いていたのも良かった……! サンキューさんの大石とトラザさんの弥兵衛の組み合わせももう何度も観てきた配役だったため、ここで観ておけて良かったです。

 また、夜公演は小林に対し「主君を連れてここから立ち去れ」という際に刀を落としていたのも好きでした。ここ、どうして刀を落としたのだろう、と思っていたのですが、小林が怯えたように見えたからと教えていただいて、なるほど、と思いました。おたくの位置からはあまり小林の動きが見えなかったもので……。

 

 浅野はトラスケさん。この日の浅野は少し声が低く、大人の殿だという感覚がありました。最近トラスケさんが大石をやるようになったこともあり、声音の使い分けをされているのかな……。

 この日の松之大廊下は初となるダエモンさんの吉良との組み合わせ。ダエモンさんの吉良は「忠臣蔵」の吉良であるという印象があったのですが、トラスケさんの浅野がその吉良に対してよく噛み合っていて、足を掴んで転ばせてしまう流れなどはこれが正解だったのだなと思うほどでした。

 夜の松之大廊下では脇差が見つからなかったのか)打刀を腰に差して出てこられて驚きました……! しっかりと吉良に対し刀を振り抜いておられて、そのシルエットの美しさと格好良さに惚れ惚れとしました。

 

 安兵衛はサンエーさん。昼公演の安兵衛で印象的だったのは、小林と対峙している間に悲しくなっていたところでした。ずっと赤穂藩の処遇や仇である吉良に対して怒っていた安兵衛が、守る価値のないはずの吉良を身を挺して、ぼろぼろになってまで守る小林を目の当たりにして悲しくなってしまったのが見えて、この組み合わせで観られて本当に良かったなと思いました。

 一方夜公演は浅野切腹後のシーンでの悲しみがとても好きでした。大石に掴みかかる時も「もういい」と吐き捨てて出ていく時も涙が滲んだトーンになっていて良かったです。

 

 弥兵衛はトラザさん。この日はサンエーさんの安兵衛とトラザさんの弥兵衛という拳でのコミュニケーションを取る組み合わせ。この日は一幕最後で安兵衛が言う「殿の無念はどうしたら良いんだ」という台詞の時に突き出された拳を弥兵衛がしっかり受け止めて、押し返していたのがとても良かったです。押し返した弥兵衛の眼差しが「この怒りはまだ持っていろ」「今は耐える時だ」と言っているように見えて、はっとしました。

 また、最近は弥兵衛が二幕で廓遊びに耽る大石の元に南瓜を運んでくるところでは「帰りますよ」と大石の手を引いていて、幼稚園のお迎えに来る母親とまだ遊びたい園児のように見えて笑ってしまいます。

 

 吉良はダエモンさん。この日赤穂浪士らが自分の命を取らないと分かった吉良が花道から戻ってくる際に吉良を見る我々観客の目を気にしているように見えて、その時この吉良には客席の我々が自分を取り囲む赤穂浪士に見えているのかもしれないと思いました。ダエモンさんの吉良はサンエーさんの安兵衛が「見ろ、吉良! 見ろ!」と叫ぶと頭を隠して見ないようにしていて、それも面白いなと思いました。

 

 小林はジューローさん。この日の小林は自分を律して吉良に従っているような感覚があり、安兵衛とどうしても戦わなければならないことが悲しくて仕方がないように見えました。吉良に向かっていこうとする安兵衛に対し「安兵衛、待て!」と叫んでいたのがとても印象的で、この小林の忠義と苦しみが切実でとても良かったです。

 

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11/14

~配役~

大石内蔵助:名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエモンさん」)

浅野内匠頭/遊女A:名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)

堀部安兵衛:名古屋参史郎さん(以下「シロウさん」)

堀部弥兵衛:名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

吉良上野介:名古屋虎之助さん(以下「トラスケさん」)

小林平八郎:名古屋参十郎さん(以下「ジューローさん」)

清水一学:水谷健さん

SFN大石主税):名古屋参永已さん(以下「サンエーさん」)

 この日の大石はダエモンさん。ダエモンさんの大石とサンスケさんの浅野の組み合わせは少し前にも拝見したばかりの感覚があって、ここに来て続くな、と思ったのですが、前回のこのペアは1か月ほど前でした。最近は一役目での配役が減ってきているため、次に観られるのはいつかわからないと思うと少し寂しさがありました。

 ここのところ感情表現が豊かな大石をよく拝見していたため、ダエモンさんの大石がずっと自分の感情を律している様子が逆に新鮮に感じられて面白かったです。

 

 安兵衛はシロウさん。この日の吉良邸での小林との立ち回りが、小林との頭の距離がとても近く、迫力があってとても良かったです。また、この日の安兵衛は声のトーンが低く、今までより少し大人びて見えたのも面白かったです。

 

 弥兵衛はトラザさん。この日ちょい見せで出て来られた際に頭に巻いているバンダナが少し鮮やかなものに変わっていておや、と思ったのですが、浅野の切腹後から真っ黒なものに変わっていて、ひょっとすると弥兵衛も喪に服していたのかな、と思いました。

 

 吉良はトラスケさん。トラスケさんの吉良はここのところずっと指導役の面が強いと感じていたのですが、この日はそれよりも浅野を虐めることを楽しむような雰囲気があって興味深かったです。また、この日は小林に対してもとても冷たく、「命拾いして良かったな」と言い放つところは衝撃を受けました。

 

 小林は一幕の最後で安兵衛を制止する場面で清水より先に安兵衛と会わなければと思っていたように見えて面白かったです。そもそもこの日の小林はずっと安兵衛に感情を寄せていて、吉良邸での立ち回りをしながらもずっと安兵衛を斬りたくないという顔をしていてとても好きでした。

 吉良に「役立たず」と言われてとても悲しそうにしていながらも斬りたくない弟子と刀を交えてまで苦しみながら吉良を守り通そうとする様子がとても矛盾していて、それがとても人間らしくて良かったです。

 

 この日のSFNは恒例のサンエーさん。小林に刀を向けようとして手で制されると「なんで止めるんだ」という顔をしていて」好きでした。この日は安兵衛がシロウさんだったこともあり、あまり安兵衛と主税に年齢差がなく、吉良が大石に斬りかかったところで二人が同じように斬りかかろうと刀を構えていてとても良かったです。

 大石を「父上」と呼ぶ主税を遊女Aに対しどう誤魔化すかは毎回地味に楽しみにしているのですが、この日は「質ウエダ」と主張していて、その苦しさがとても面白かったです。

 

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11/15

~配役~

大石内蔵助:名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

浅野内匠頭/遊女A:名古屋参史郎さん(以下「シロウさん」)

堀部安兵衛:名古屋参十郎さん(以下「ジューローさん」)

堀部弥兵衛:名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエモンさん」)

吉良上野介:名古屋参永已さん(以下「サンエーさん」)

小林平八郎:名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)

清水一学:名古屋虎之助さん(以下「トラスケさん」)

 大石はトラザさん。この日は筆頭家老として感情を表に出さないように必死で自分を律していたのが新鮮でした。特に浅野が切腹した後のシーンで安兵衛に胸倉を掴まれるところで、拳を固く握りしめていて、若い安兵衛には分からない大石の覚悟の深さや忍耐を感じられたのがとても良かったです。

 大石は浅野が言った「殺めの連鎖を作ってはならぬ」という言葉を浅野らしくて気に入っていたのだろうなと思います。だからこそその言葉をずっと大切にしていて、最終的に浅野への忠義とは何かという結論を導き出せたのではないでしょうか。特に夜公演では、小林に向かって「主君を連れてここから立ち去れ」と言う際に少し泣きそうになっていて、現在進行形で忠義を果たそうとしている小林を見たことで浅野の生前に忠義を果たせなかったことが悲しくなったのかなと思いました。

 それはそうと夜公演の畳替えのシーンで襷がないと大騒ぎしていて大笑いしました。

 

 浅野はシロウさん。この日松之大廊下で吉良からの攻撃に必死で耐えていたのですが、その忍耐が決壊した「吉良上野介」という声の低さがとても良かったです。

 

 安兵衛はこの日振り返らせるのではなく真っ向から掴みかかっていたのですが、怒りで狭くなった視野では大石の固く握られた拳に気が付かないのが安兵衛の若さでとても良かったです。

 この日の安兵衛は感情がとてもよく出ていたのですが、その中でも南瓜を包んだ大石に見つめられて納得していたところに安兵衛の成長を感じてとても好きでした。

 畳替えのシーンは、昼公演では襷を口に咥えたまま喋ったところ上手く襷掛けができず笑ってしまったのですが、夜公演でよく見たら腰ひもで結んでおられて長さがぎりぎりだったのも面白かったです。それはそうと今おたくは『熱海殺人事件』のことばかり考えているため、うっかり「腰ひもだ……!」と脳内が一瞬『熱海殺人事件』に乗っ取られていました。

 

 吉良はサンエーさん。この日は松之大廊下で吉良の残忍性がよく出ていてとても良かった……! 必死で怒りを抑えこんで耐えている浅野の前髪をわざわざどけて「調子に乗るな」と煽っておられて、それがとても良かったです。

 

 小林は新役となったサンスケさん。あまり感情が見えずまだサンスケさんの小林が掴めていないのですが、吉良に「わしの羽織は」と言われた際に裏切られたような顔をしていたのが興味深かったです。

 

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11/16

~配役~

大石内蔵助:名古屋参十郎さん(以下「ジューローさん」)

浅野内匠頭/遊女A:名古屋参永已さん(以下「サンエーさん」)

堀部安兵衛:名古屋虎三郎さん(以下「トラザさん」)

堀部弥兵衛:名古屋参史郎さん(以下「シロウさん」)

吉良上野介:名古屋参駄右衛門さん(以下「ダエモンさん」)

小林平八郎:名古屋山之助さん(以下「ダエモンさん」)

清水一学:水谷健さん

 大石はジューローさん。この週末、ジューローさんのお芝居にとても感情が乗っていてずっと良かったのですが、この日は特に小林の前で刀を納める際の表情に『スケロクブギ!』の助六が友切丸を納める姿が重なって見えてとても好きでした。助六も大石も仇討ちをやめることを選ぶ人物なので、要素としては近いのだと改めて気が付いて興味深かったです。

 ジューローさんの大石とトラザさんの安兵衛の組み合わせといえば、トラザさんの安兵衛が「だから此奴を斬るのです」という台詞を「だから此奴を……!」で止めるようになった時にそっと安兵衛を止めてくれた組み合わせ。この日も安兵衛が「だから此奴を……!」と小林を斬ろうとすると肩を掴んで止めていて好きでした。

 

 浅野はサンエーさん。松之大廊下で一度刀に手を掛けたものの、刀を抜くことの重大さが分かっているからぐっと堪えているだけで、吉良のことをこの場で切り捨ててしまいたいと思っている様子が伝わってきて好きでした。だから我慢の限界が来ると刀を抜いて刃傷に及び、切腹することになっても後悔がなくきっぱりしているのがまたとても良かったです。

 この日の松之大廊下のシーンは必死で吉良の足に縋りつく時間が長く、人間の滑稽さが出ていたのも面白くて好きでした。

 

 この日安兵衛は浅野の切腹を見ている間ずっと悲しみを堪えており、その後の「ちくしょう」という台詞のトーンもとても悲しくて良かったです。また、安兵衛が大石に掴みかかる様子が前日とまったく同じで、安兵衛と大石の配役が入れ替わっているのが面白いなと改めて思いました。トラザさんとジューローさんって四役ともまったく同じ役なんですよね……。

 この日小林がどうして吉良に仕えているのかが本当に分からず、理解できないから小林に対して怒りを見せているように見えたのが興味深かったです。その怒りが殺陣にも出ているように感じられて、それも好きでした。

 最後に大石が吉良を殴った時に怒りが収まっておらず吉良に刀を向けていたのも良かったです。吉良への怒りは収まっていないものの、殴った張本人である大石が悲しそうだったために煮えたぎっていた怒りがすっと温度を失って悲しみになったように見えて、その変化がとても面白いなと思いました。なお、夜公演では大石と目が合ってもなお怒りが収まりきらない様子で、その違いも好きでした。

 

 小林は二日続けてサンスケさん。安兵衛に注目しているとどうしてもあまり小林を見ることができないのですが、安兵衛に刀を突きつけられている間微笑んでいて、初めて小林の感情が少し見えたような気がしました。

 

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 来週は水曜日から+1回もあり、目の離せない一週間になりそうな予感。まだ四役目をやっておられない座長の帰還もあり、とても楽しみです!