11/8 team TRASH 本公演 10th Anniversary performance『TRASH BOX』@北文化小劇場
11/9 team TRASH 本公演 10th Anniversary performance『TRASH BOX』昼公演・夜公演@北文化小劇場
発表から楽しみに待ち続けたteam TRASH本公演。おふたりのご活躍は日々拝見しておりましたが、「team TRASH」としての活動をようやく拝見することができました!
前説(前説については後述します)とOPの映像が終わり、スクリーンに浮かび上がったのは洋装の長谷川さんと和装の神田さんのシルエット! 「team TRASH」のシルエットだ、と歓喜する暇もなく、始まった立ち回りの緊迫感と、これから始まる公演への期待でわくわくしました。
おふたりが交差する形で駆け抜けて最初の立ち回りが終わり、暗転した舞台上に苦しげな声と共に登場したのはスウェット姿の長谷川さんでした。裸足とスウェットの組み合わせは『ヒモのはなし』を思い出してしまうパブロフの犬(おたく)なのですが、全体的にお芝居パートの長谷川さんの中に『ヒモのはなし』のシゲの欠片を感じたのは気の所為ではないと思います。また、感覚としては「答えのある『世代交代』」という印象もあり、これが神田さんの導き出したメタ演劇なのかな、とも感じました。
ここはどこだと辺りを見回す長谷川さんの元にガシャガシャと空き缶の音を鳴らしながら現れたのは神田さん。ステージ上をお掃除する神田さんに対して、こんなところを掃除してどうするんだ、と指し示すステージ上は、たくさんの思い出の品で飾られていました。開演前に物販ブースの装飾に見覚えのある帯や虎の羽織があったのも、このステージ上に飾られた思い出の中のひとつだったのかな、とこの時思いました。個人的にはステージ上で刀立てになっていた樽が忍者隠密隊B.C.Aのもので、TANBA様(と、百地丹波様)も長谷川さんを構成する一部なのだと言ってくださっているようで、とても嬉しかったです。
余談ですが、毎公演長谷川さんが捨てようとするアイテムが違って、その度に神田さんが「捨てないで! ちゃんと育てるから!」と子猫を拾ってきたことがバレた子供のように守っていて好きでした。宝物を守ってくれる神田さんに感謝です。また、仮面ライダーのフィギュアをみて仮面ライダーの歩き方を再現する長谷川さんに対し「言われたことある」、背中で泣く長谷川さんに対し「道に迷ったおばあちゃん」と言う神田さんのことばえらびも秀逸で好きでした。
「思い出してくださいよ、昔のこと」「夢とかないんですか」と問われてもだらだらしていた長谷川さんに対し、神田さんが日本舞踊を勧める中でお手本を見せる、と「松の緑」を踊られ、ここでおたくは一度大喜びしました。神田さんの舞を拝見する機会は今までにも意外とありましたが、しっかりと日本舞踊の披露の場として拝見したことはなかったので、新鮮に一つひとつの所作を注視できたのか嬉しかったです。
「松の緑」を終え、「三つ首」を中心とした型の話を経た神田さんは無理やり長谷川さんに着物を着せ、おふたりで一緒に「I'm a mess」という曲で踊ることに。この時の神田さんが、「僕はずっとあなたと踊りたかったんです」と仰っていて、その言葉通りとても嬉しそうな笑顔を浮かべておられたのが本当に好きでした。長谷川さんもところどころ笑みが浮かんだように見える瞬間があって、team TRASHの関係性ってやはり素敵だなと再確認しました。
また、着物を着付けるという流れで「女性に着付けるのっていいよね」「やましい気持ちはないがお山があったら見る」と言い合うおふたりは控えめに言っても最低でやはり人間なのだな……と思いました。
「I'm a mess」を披露して、着物を脱ぐ途中でラジカセにぶつかってしまう長谷川さん。その衝撃でラジカセからは『仮面ライダー電王』の曲が流れ出しました。やらないよ、と渋っていた長谷川さんでしたが、神田さんに押し出されるようにして仮面ライダー電王の各フォームの変身を含めた素面でのアクションショー! 確か曲は「Double-Action」……ですが、実は『仮面ライダー電王』は未履修のためあまり分かっていません。しかし、ヒーローショーに夢中になったことがあるおたくは、観たいと思ってももう叶わないのだと思っていた長谷川さんによるヒーローアクションが観られて本当に嬉しかったです。普段ナゴヤ座で名古屋虎三郎さんとしてのお芝居を拝見している中で、「今日のお芝居はヒーローだった!」と強く感じた回があって、そのお姿がとてもきらきらしていたことが忘れられないおたくは、ヒーローを演じる長谷川さんにあの時のきらきらを感じて毎公演涙目で拝見していました。
ヒーローとなった長谷川さんに決め技を食らって倒された神田さんが捌け、花道に一人長谷川さんが残された状態で始まったのは一人語り。この内容、以前文字にしてくださっていたのですが、実際に長谷川さんの口から聴くと言葉に実感の重みが乗って、ぼろぼろと泣いてしまいました。内容を要約するのは簡単なのですが、長谷川さんの言葉選びが一番伝わるのではないかなと思うので、Instagramのリンクを貼っておきます。(→ https://www.instagram.com/p/B1RVB9UAghy/?igsh=M3B5bW14N3FrNHFy )
ヒーローショー時代の思い出を語って夢を取り戻した長谷川さんが何処かへ行くのと入れ替わりに神田さんが再びご登場。ここまでのジャージ姿とは打って変わって凛々しい着物姿で「夢芝居」を舞われました。
実は幼い頃から日本の文化に惹かれて生きてきたおたくなのですが、日本舞踊っていまいち見方が分からずにいます。日本舞踊の振り付けにはそれぞれ意味があると聞いたことがあるのですが、基礎教養が足りないためにどこに注目していいのか分からないからです。そんなおたくでも、この「夢芝居」は歌詞と振り付けとのリンクが見えて、日本舞踊を観る楽しみが少し分かったようなきがしました。
また、曲の途中で神田さんの語りもあり、どうして日本舞踊をやろうと思ったのかというお話を聞くことができて良かったです。その前の長谷川さんの語りで緩んだ涙腺はここでもまた緩みました。
神田さんの「夢芝居」が終わったばかりのステージに花道から現れたのは『ポケットモンスター』のサトシの衣装に身を包んだ長谷川さん。長谷川さんが「めざせポケモンマスター」を歌っておられて、それだけで十分に面白いのですが、 長谷川さんが神田さんに名前を尋ねた瞬間笑ってしまいました。サトシとタケシですものね……! 客席の手拍子を煽りながら通路に降りて歌う長谷川さんの後ろで、慌てて着物を脱いでピカチュウの着ぐるみパジャマに着替える神田さんは三公演目、千穐楽にしてついに成功。客席からも「おお……!」と声が漏れた気がします。千穐楽ではお手伝いに来ていた加藤大輔さん、伊藤楓人さん、山本航大さん、神谷脩介さんがダンサーとして登場し、局所的にステージ上の平均年齢が下がったのが地味にツボでした。
「夢を思い出した」と主張する長谷川さんに、「あなたの仕事は殺陣師でしょ!」と思い出させる神田さん。長谷川さんのつけるアクションが好きだ、とまっすぐなラブコールをぶつけるお姿が本当に好きでした。あとここ、「いやもう疲れたし」と乗り気でない長谷川さんに「できないの?」と吹っかけて「何使ってもアクション作れるし」という言葉を引き出す神田さんの手腕に麗麗さんでも見たな……と思いました(紅愛さんと近藤りょーじさんの「やれんの?」「やれるよ」です)。
神田さんがステージ上のものから一つ選ぶ間に長谷川さんはずんずんと客席に降りてゆき、めぼしいものを物色。
初日はピコピコハンマーと上着を使っての対決で、設定は「二本足で立てるようになった牛(神田さん)」と「どこにでもいるスペインの闘牛士(長谷川さん)」。肩に上着を掛けては「湿っていてすみません」と仰っているのが面白かったです。
二公演目は段ボール箱と(お客さんに中身を全部出してもらった)鞄で、「変態の宅配便業者(神田さん)」と「ちょうど出かけようとしていたマダム(長谷川さん)」。マダムに迫っていく宅配便業者が本当に恐ろしく、神田さんの演技力に感服しました。ラストでマダムが華麗な蹴りをいれていたせいで、一瞬にしてイメージ図がマダムから『仮面ライダー鎧武』の凰蓮・ピエール・アルフォンゾになってしまったことは秘密です。
千穐楽は『ヒモのはなし』のサイン入りのタオルと長谷川さんの語りで登場したばかりの若かりし頃の長谷川さんを面接したという事務所の専務からお借りした帽子での対決! 「面接と偽って殴り込みに来た若者(神田さん)」と「専務(長谷川さん)」という設定のこの回、他の回より肉弾戦が多く、一番好きでした。
即興アクションコーナーを終え、神田さんが「アクションと舞でやろう」と持ちかけると長谷川さんはまたも渋ったものの、見事な土下座を披露した神田さんに負け提案に乗ることに。先攻後攻を決める熾烈な戦いの末(?)、長谷川さんが着替えるため場を繋いでくれと託された神田さんによる「怖い話」のコーナーがありました。
「怖い話します」とクッションの上に正座した神田さんから飛び出したのは、エピソードに事欠かないで(多分)有名なお父上のお話。毎公演違うエピソードだったのですがどれも粒揃いの面白さで楽しかったです!
そして準備が整った長谷川さんは青い着物に赤い羽織姿に棒を担いでご登場……! 始まったのは「乱の舟唄」でした。
この曲での踊りは、実は6月の『大江戸喧嘩花』で安田桃太郎さんが踊っておられたのを拝見しています。それがとても格好良く、長谷川さんにもやっていただきたいなと思っていたものの、その時はスケジュールが詰まった中での一日だけのゲスト出演だったため叶うはずもなく、諦めていたため、ここで拝見できると思わず本当にびっくりしました。
曲に合わせて手拍子を煽り棒を振り回す長谷川さんは太陽のように眩しくて、私が大好きな長谷川さんの要素がたくさん詰まっていました。本当にありがとうございます。物販のランダムブロマイドにこの「乱の舟唄」のお衣装も何種類かあってとても嬉しいです……!
入れ替わりで神田さんが踊られたのは「夜桜お七」! この曲、紅白歌合戦でしか拝見していないのですが、拝見する度に好きだなと思っていた曲だったので嬉しかったです。「夢芝居」の舞とはまた違って、嫋やかさのある傘や扇を使った踊りで、食い入るように見ていました。紙吹雪も使っておられて、これも『大江戸喧嘩花』で拝見したやつだ……! とわくわくしました。あの6月、移動量が正気ではなかったものの、この『TRASH BOX』の解像度が上がったので本当に行って良かったです。
そしていよいよラストの洋装の長谷川さんと和装の神田さんによる立ち回り! ストーリー仕立てになっていて、これがteam TRASHの本領発揮なのだろうなとすんなり納得できる演目でした……! 長谷川さんの上裸は拝見したことがありヘルシーだなと思ったのですが、神田さんが片肌脱ぎになった途端見てはいけないものを見ているのでは? と動揺しました。客席も少しざわついていたように感じます。肩に揃いの紋章が入ったおふたりが、ようやく対等に戦える相手を見つけたと言わんばかりに楽しそうに刃を交わしていたのが好きでした!
カーテンコールでは写真撮影タイムを挟み、事前に書いた感想をくしゃくしゃに丸めてステージに投げ込むという演出がありました! 終演後にステージまで届かなかった感想を回収しておられるところをお見かけしたのですが、ちゃんとごみ箱に入れて回収しておられて、この『TRASH BOX』の最初と最後にスクリーンに表示された「One man’s trash is another man’s treasure. 」(「誰かにとってはゴミでも、誰かにとっては宝。」)という言葉のように、ごみ箱を宝箱にしているようで大好きでした。
ここで思い出したように冒頭で後述すると書いていた前説ゲストのお話です。といいつつ、雀の涙しかない記憶領域を本編に割かれているためメモのようなレベルでごめんなさい……!
初日は「おもしろ前説ゲスト」がナゴヤ座の座長である名古屋山三郎さん(以下「座長」)、「おもしろ物販売り子ゲスト」が名古屋山之助さん(以下「サンスケさん」)。前説ではteam TRASHとの思い出を語ってほしいと言われたとのことで、座長が出会った時のお話をしてくださいました。曰く、今回の会場でもある北文化小劇場で共演したことが出会いで、二匹の虎をグッと調伏して仲間に引き入れたとのことで、「グッと調伏して」と言いながら小脇に抱えるようなジェスチャーをしておられたのがツボでした。また、長谷川さんから渡されたという手紙は生命保険の書類が入っていたであろう開封済の封筒に入れられていて、その雑さに笑ってしまいました。
おもしろ物販ゲストのサンスケさんは「おもしろ」を課されたために家にあるおもしろグッズを探した結果眼鏡に大きすぎる蝶ネクタイという出で立ちで物販に立っておられました。終演後も劇場出入口前の物販におられて、思わず「くいだおれ太郎」と口走ったところ「誰がくいだおれ太郎や」と本場のツッコミをいただいて大笑いしました。その節はありがとうございました(本当に)。
二日目の前説ゲストは横川結城さん。ナゴヤ座におられた頃は名古屋参十坐さんというお名前だったため、長谷川さんからのお手紙でもずっと「トウザさん」と呼びかけられていて面白かったです。また、千穐楽では横川さんにプレゼントがあると山本さん、神谷さんのおふたりが運び込んだのはゴムパッチン。久しぶりにゴムパッチンを受ける横川さんを拝見して懐かしさを感じました。
この日横川さんは他のお仕事があり夜公演の前説が終わると飛び出していくとのことでしたが、「前説ゲスト」で呼ばれているにも関わらず物販にも立っておられて働き者だ……! と感嘆しました。
今回の『TRASH BOX』という公演は、きっとここまで歩み続けてきたおふたりの得た経験を存分に詰め込んだ宝箱のような公演だったのだろうと思います。その大切な宝物をたくさん観ることができて、おたくはとても幸せでした! 公演をやろうと決めてくださって、本当にありがとうございました!
次回のteam TRASHの公演は長谷川さんによると30周年とのことでしたが、できればまた近いうちにおふたりの公演が観られたら嬉しいです!